192日目:ワイバーンのお肉!

 神聖歴六一〇二年・時雨鶏しぐれどりの月第二二日・天気:雨


 今日も雨の中、大渓谷へと続く荒野を移動中です。

 降り続く雨と短剣のお陰か、あれ以降魔物達が襲ってくることはありません。

 ……このまま無事にドラゴン観測所へ着きたいですね。

 

 けれど、そんな思いとは裏腹に黒竜の短剣の様子は酷くなるばかり……。

 大渓谷へ近付くにつれ、ますますあの威圧感が強くなっていきます。

 辛うじて暴走を抑え込んでいるルイナさんの術符もいつまで耐えられるか……。

 もしこんな状況で白竜に出会ったら大変なことになる気がします……。

 はぁ……本物のドラゴンが見られるのを楽しみにしていたのに……残念です。


 そうやって落ち込んでいると、いつの間にか時刻はお昼。

 ……どんな時でもお腹はすきますね。安全な場所で食事にしましょう。

 ちょうど目の前に大岩がありますし、あの陰でならゆっくり休めそうです。

 黒竜の短剣の影響で魔物が寄って来なくても用心はしておかないと……。

 

 さぁ、というわけでお昼ご飯ですよ!

 メニューはなんと……なんと! ドラゴンステーキです!

 と言っても、本物のドラゴンのお肉ではなく、ワイバーンのお肉ですけどね。

 

 本物を使用したドラゴンステーキとかそれこそお伽噺の中の食べ物です。

 ワイバーン等の亜竜ならまだしも真正のドラゴンを狩るとか不可能ですから……。

 歴史上でも人がドラゴンを倒したという話は正確さに欠ける数例があるのみ。

 なので、ドラゴンを素材とした装備の出自はその全てが私の短剣と似ています。

 つまり、なにかの理由で命の尽きたドラゴンを回収し、それを利用したものです。


 因みに、ドラゴン観測所が設立された理由も実はその辺が関係しています。

 観測所の目的は主に二つ。

 一つはその危険な存在の動向を常に監視し、異常があれば各所へ報告すること。

 もう一つは、命を落としたドラゴンをいち早く発見し、それを回収すること。

 ……他にも細々としたお仕事はあるみたいですが、大体はそんな感じです。

 さて、難しい話はこの辺で止めて、そろそろ昼食にしましょう。

 少し前からお肉の焼けるいい香りがしてもうお腹ペコペコです!


 ……目の前に置かれた厚切りのお肉! これが噂のドラゴンステーキ!

 わぁ~わぁ~。た、食べていいんですよね!? 食べますよ? 本当に!

 思わず唾を飲み込み、震える手で慎重にお肉へナイフを入れると……!

 スーッとなんの抵抗もなくナイフが沈みます!

 こんな柔らかいお肉は初めてです!

 

 切り分けた肉汁滴るお肉をゆっくり口の中へ運ぶと……。

 その瞬間、お肉の旨味が口いっぱいに広がります。

 しかも切る時はあんなに柔らかかったのに噛むとしっかり歯応えが!

 加えて噛めば噛むほど味が豊かになっていきます……なにコレ凄い!

 今までのお肉は本当のお肉じゃなかったのです! あぁ……美味しい。


 はぁ……幸せな時間というのはあっという間ですね……。

 でも、なんだか元気が出てきました!

 観測所までもう少し、頑張りましょう!


 今日の収支

 (特になし)

 ――――――――

 残金:金貨1枚、銀貨50枚、銅貨53枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨17枚、銀貨76枚


 (=v=)ムフフ♪ 最高のお肉でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る