190日目:竜の夢と私の短剣。
神聖歴六一〇二年・
むぅ……昨日は夕食の後片づけで疲れたせいか変な夢を見てしまいました。
雷鳴轟く大雨の中、白竜と黒竜が激しく争っているそんな夢……。
目が覚めた今でもハッキリと思い出せるほど妙に現実味のある内容でした。
……少しだけ胸騒ぎがしますね……なにも起こらないといいんですけど。
夢の内容に小さな不安を感じつつ、装備に着替えようとしてふと気が付きます。
……私の短剣って黒竜の牙が素材だったような……?
なにか関系があるんでしょうか? この短剣、ちょっと普通じゃありませんし。
……いえ、考え過ぎですね……ただの偶然です。馬鹿馬鹿しい。
心配性な自分に呆れながら枕元の短剣に右手を伸ばした瞬間、指先に奔る衝撃!
痛ッ!? え? 弾かれた!? なにが起こったんですか!?
少し赤くなった指先を擦りつつ、短剣を睨みつけた自分の目を疑います。
……短剣にバチバチと纏わりつく幾条もの紫電。
加えて、周囲に振り撒かれるあの排他的な威圧感……。
こ、これは異常事態です……あと私の手に負えそうな感じじゃありません……。
というわけで色々詳しそうなノアさんを呼んできました。
朝食の準備中にすみません。そのことを謝ると、大丈夫、と笑うノアさん。
なんでも食事の支度はルルちゃんとニコさんに任せてきたそうです。
しかし、笑顔だったノアさんは短剣を見るなりその表情を曇らせます。
なにをしたの? と訊かれますが分かりません……ただ、変な夢は見ました……。
夢? と怪訝そうに見つめてくるノアさんに恐る恐るその内容を話します。
そうして話を聞き終わると、ノアさんは難しい顔をして黙り込んでしまいました。
……導き出した答えに確証が持てない……そんな厳しい表情です。
無言のノアさんをただ見つめていると、嬉しそうなルイナさんがやってきました。
どうやら朝食ができたことを伝えに来てくれたみたいです。
けれど、私達の雰囲気を察すると、どうかした? と真剣な表情で尋ねてきます。
隠しても仕方がないので訳を話すと、あー、となにか気付いた様子のルイナさん。
なんですか!? 教えてください! 凄く困っているのです!
すると、食事をしながら話そうか? と言ってテントを出ていってしまいます。
……そういえばお腹がすきましたね。
朝食を食べながらルイナさんが教えてくれたのは、大渓谷に棲む白竜のこと。
聞けば、数年前まで大渓谷は白竜と黒竜が縄張り争いをしていたそうです。
そして、争いに勝利したのは白竜。黒竜は戦いの中命を落としたんだとか。
その後、黒竜の亡骸は王国に回収され、各種素材として市場へ流れることに。
ルイナさん曰く、あの短剣はその流れた素材から製作したんだろうと……。
かつての仇敵が今も暮らす場所……それは機嫌が悪くもなりますか。
正直、引き返したい気持ちでいっぱいですが、そうもいきません……。
とりあえず、その白竜に注意して進むしかありませんね……。
今日の収支
(特になし)
――――――――
残金:金貨1枚、銀貨50枚、銅貨53枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨17枚、銀貨76枚
(ノ_-;)ハア…なんか面倒な予感がします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます