187日目:ルートの再検討。

 神聖歴六一〇二年・時雨鶏しぐれどりの月第一七日・天気:晴


 ドラゴン観測所を目指して五日目……今日こそ山を下りたいですね。

 そうしないと街道を進んだ方が安全で早かったなんてことに……。

 急がば回れ……今更ですがそんな言葉を思い出してしまいます。


 簡単な朝食を済ませ、テントを片付けたら早速移動です。

 コボルド達は……もう見当たりませんね。

 結局なにをするために外へ出てきていたのか……。

 う~ん……雨で水浴びでもしていたんでしょうか?

 鉱山の中だとそういうことには不自由しますから……。

 

 よし、また出会うことがあったらゆっくり観察してみましょう。

 今までに知られていないことを調査するのも冒険の醍醐味ですからね。

 そしてゆくゆくは『コボルド観察記』とか本にまとめたりして……。

 意外と少ないんですよ? そういう書籍。あれば助かるんですけどね。

 

 そんなことを考えつつ歩くこと数時間。

 ようやくアルシス第二鉱山の麓に辿り着きました。

 ここまで来ればあとは楽々です。

 時刻もちょうどお昼ですし、休憩しつつ昼食をとりましょう。

 

 食事を終えたら、今後のルートを相談し合います。

 第一案はここから街道へ戻るもの。

 今ならまだ修正可能な段階ですし、到着予想日も誤差範囲内。

 それに安心、安全で確実に観測所へ向かうことが可能です。


 第二案は再び山道を進むもの。

 この先にあるアルシス第四鉱山を越える経路です。

 当初計画していたルートですね。

 順調に山越えできれば三~四日で向こう側に着けますが……。

 第二鉱山での状況を考えると予定通り進めるかかなり怪しいところです。

 目的地の大渓谷が近くなれば魔物の数も増えますしね……。


 ノアさんは危険の少ない街道ルートがいいんですか?

 ニコさんは山道ですか……あぁ、珍しい薬草や鉱石を探したいと……。

 ルルちゃんは……え? もう帰りたい? そ、その答えは予想外でした。

 さて、どうしましょう……意見がまとまりません。


 その後も長々と話し合った結果、街道を進むことに決定しました。

 なにもなければ六~八日程度で観測所のある大渓谷に到着する予定です。

 あぁ、ルルちゃんそんな疲れ果てた表情で見つめないでください……。

 できるだけ無理のないように休憩を多くして進みますから、我慢してください。

 ニコさんも拗ねない! 珍しい薬草なら大渓谷にもあるはずですから、多分!

 

 夕方、どうにか街道に出ましたが今日はここまで。今から野宿の準備です。

 あれ? 今回はルルちゃんがテント張りを手伝ってくれるんですか?

 じゃあ、ノアさんの手伝いは誰がって……ニコさん!?

 な、なんですかその勝ち誇った笑み! 言いたいことがあるなら聞きますよ!?

 え? 料理のレシピなんて調合より簡単? な、な、な……。

 ニコさんは、ニコさんは仲間だと信じていたのに……こんなのってあんまりです。


 うっ……しかも微妙に美味しい……帰ったら絶対に料理教室へ通いましょう。

 そう心に決めました。日記にも書いたしバッチリです。


 今日の収支

 (特になし)

 ――――――――

 残金:金貨1枚、銀貨50枚、銅貨53枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨17枚、銀貨76枚

 

 (ノ_・、)シクシク 私だけ料理ができないなんて……。

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