186日目:雨の中の出会い。
神聖歴六一〇二年・
くしゅんッ……はぁ、ようやく夜が明けました……。
この季節にテントも張らずに山で野宿とかもう寒くて、寒くて……。
毛布に包まってもいても足や手の先が少しずつ冷たくなっていくんです……。
あの時、ニコさんの怪しげなお薬が無かったらと考えると……。
……うん、嫌な想像はやめて早く移動しましょう。雲行きも怪しいですし。
しかし、山頂を越え下山し始めると案の定、雨が降り始めました。
そうして止むことなく、次第に強くなる雨足……。
濡れて重さを増した鎧や服は体温を奪い、体力を削っていきます。
これは早急にどこか雨宿りできる場所を探さないと危険です……。
と言ってもこの雨の中視界は最悪……そう簡単に見つかるわけがありません。
それでも諦めずに目を凝らしていると、目の前を横切る複数の小さな影……。
頭の上でピコピコと動く三角耳にフリフリ動く尻尾……コボルドです!
……でも滅多に坑道の外へ出ない彼らがこんな場所でなにを?
確かにここは鉱山ですけど……いえ、考えるのはあとですね。
今は彼らを追うことを優先しましょう。
コボルド達について行けば近くにある坑道の出入り口に着くはずです。
トコトコと山道を進むコボルドを見失わないように歩くこと十分ほど……。
彼らと出会った場所から少し下り、山道を外れた場所にそれはありました。
山肌から突き出した大きな岩。その下に小さな裂け目のようなものが……。
どうやらコボルド達はそこから出入りしているみたいです……。
予想が外れました……あのサイズでは私達は中に入れません……。
でも、この場所ならテントを張ることができそうですね。
雨の中これ以上移動するのも危険ですし、今日はここで休みましょう。
風雨に苦戦しながら一時間後、どうにかテントを張り終えました。
疲れ果て、鎧を脱ぎ服を着替えてテントで休んでいると外から妙な音が……。
硬い布をなにかで引っ掻いているような感じですね……。
気になりテントから顔を出してみると、そこにはコボルドの姿がありました。
両手で抱えるほど大きな壺を持っていますけど……なんでしょうね?
困惑していると、身振り手振りで意思を伝えようとするコボルド……。
えっと……壺となにかを交換したい……そんな感じでしょうか?
う~ん、確かチーズが残っていたはずですけど……。
試しに取り出してみると、コボルドは嬉しそうに何度も頷きます。
彼らにはいつもお世話になってますし、断る理由はないですね。
チーズを渡すとコボルドは壺を置き、喜んで去っていきました。
さて、壺の中身はなんでしょう? 覗いてみると中には液体が……。
確認のため指につけ、恐る恐る舐めてみると……あ、これ蜂蜜酒です!
寒かったので助かります。皆で飲んで温まりましょう!
あ、ルルちゃんはまだ早いので、お茶で我慢してください。
はぁ……甘くて美味しい。
予定は狂いっぱなしですけど、少しだけ元気になれました。
今日の収支
(特になし)
――――――――
残金:金貨1枚、銀貨50枚、銅貨53枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨17枚、銀貨76枚
(*'-'*) コボルドに感謝、感謝です。
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