185日目:空からの襲撃者。

 神聖歴六一〇二年・時雨鶏しぐれどりの月第一五日・天気:晴


 ドラゴン観測所への物資運搬任務三日目。

 現在、私達はアルシス第二鉱山を尾根伝いに登っています。

 と言っても、今はまだソシオに乗っているので楽々です。

 標高はそれほど高くないので、できれば今日中に山頂を越え下山したいですね。

 

 そうして登ること数時間後。ようやく山の中腹までやってきました。

 ここから道は細く険しくなるので、ソシオから降り徒歩で進むことになります。

 ほら、ニコさんもルルちゃんも辛そうな顔をしてないで行きますよ!

 お昼までに頂上へ着くんですから! そこで食べるお弁当はきっと美味しいです。


 山頂での昼食という小さな目標を持って歩き始めること一時間。

 もう少しで頂上というところで先頭を進むノアさんが、突然歩みを止めます。

 空を見上げるその視線の先には……鳥? でしょうか? なにか飛んでますね。

 目を凝らしますが、かなり上空にいるのか正体はまでは分かりません……。

 でも、視力がエルフのそれに近いノアさんは違ったみたいです。

 上空の影を見続けた後、慌てた様子で近くの岩陰へ隠れるように言ってきます。

 

 そのあまりの焦りように驚きつつも、急いで岩陰に移動。

 ノアさんの指示に従いできるだけ姿勢を低くして姿を隠します。

 数分後、先程まで私達がいた場所に上空から降りてきたのは一頭のワイバーン!


 ワイバーンは前脚が翼と同化している二足歩行の竜です。

 地域によっては飛竜や翼竜と呼ばれることもあります。

 見た目こそドラゴンとよく似ていますが全く違う種族です。

 それでもその強さは並の魔物を軽く超えます……つまり非常に危険な魔物です。


 ……アレの狙いは恐らく私達でしょう。

 ノアさんが気付いていなければ今頃きっと襲われています。

 だってほら、今も辺りを探るように鼻をヒクヒクとさせていますし……。

 幸い風下にいるため見つかっていないようですけど……どうしましょう?

 ……現状、ノアさんの魔術が使えないので戦う選択肢はナシ。

 ほぼ近接攻撃しかできないこのパーティで立ち向かうとか自殺行為です。

 ノアさんが弓矢を装備中ですが、それでだけで狩れるほど甘くはありません。

 

 結論はこのまま隠れてやり過ごすのが一番ということに……。

 は、早くどこか飛んでいきませんかね……緊張で息がつまりそうです。

 うぅ……もう少し、もう少しで山頂だったのに……。

 そこから景色を眺めつつ昼食にする予定だったのに……最悪です。


 ……結局、それから夕方まで私達は岩陰に隠れ続けることになりました。

 そして、ワイバーンは去りましたが、暗くなる今から移動するのは危険です。

 そのため今晩はここで野宿をすることに……。

 けれど、場所が場所だけにテントは張れませんし、食事も作れません……。

 数枚の毛布に包まりつつ、甘い粘土のような携帯食料を齧る悲しい夜です。


 唯一救いがあるとすれば星空がとても綺麗なことぐらいでしょう……。

 はぁ……明日はちゃんと下山できますかね……。

 

 今日の収支

 (特になし)

 ――――――――

 残金:金貨1枚、銀貨50枚、銅貨53枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨17枚、銀貨76枚


(;へ:)寒いです。お腹減ったです。

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