167日目:危なげな後輩。
神聖歴六一〇二年・
ふぅ……どうにか無事に地上へ辿り着きました。
さて、とりあえずベースキャンプで少し休憩しましょう。
キャンプに着いたら鉱石などの素材を分配します。
すると、こんなに貰っていいんですか!? と驚くルルちゃん。
一生懸命頑張っていましたし、遠慮せずにどうぞ。
それを使って装備を新調するといいですよ。
鉄と銅とマインワームの素材少々……割と良い装備が揃うはずです。
……さてと、休憩はこれぐらいにして王都へ帰りますか。
王都東区アルシス街の冒険者ギルドに着いたのはお昼少し前。
受付の眼帯お姉さんに報告へ行くと、少し驚いた様子で見つめてきます。
そして品定めするような視線で、よくこの量を採掘できたな、とお姉さん。
……それってどういう意味ですか?
なにかを含むような台詞に思わず声が低くなります。
するとお姉さんは肩を竦め事情を説明してくれました。
実はあのお勧め依頼には試験的な意味合いがあったそうです。
私たちがギルドの評価通りの冒険者かその確認をしたかったとお姉さん。
だから通常手段では鉱石の採掘が難しい場所へ行かせたんだとか。
ダンジョン層へ進む判断力とマインワームを討伐する実力がなければ達成できない依頼。
……なんて面倒で意地悪な試験なんでしょう。
まぁ、でも王都のギルドにも一応認められたみたいですね。
報酬を受け取りギルドから出ると、近くの武具店にルルちゃんの姿が。
……なにやら店の人と言い争っているみたいです。
心配になって近付くと段々と話の内容が聞えてきました。
どうやらルルちゃんの素材の買取りで揉めている感じです。
店の前に来ると、私たちに気が付き愛想笑いを浮かべてくる店主のおじさん。
ルルちゃんはどこかホッとした表情を向けてきます。
話を聞くとやっぱり不当に安い値段で素材を買取られたみたいです。
はぁ……なんで直接店に売ったでしょう、ルルちゃん。
確かにギルドで換金するより高い時もあるんですけどね。
でも、こんな問題が起こるので最初の内はギルドに頼った方が無難です。
直接売るのは信頼できるお店が見つかってから。それが基本なのに……。
その後、話し合ってどうにか素材は返してもらいました。
かなり渋られましたけどね……。
さて、ルルちゃん? その素材で装備を新調するはずでしたよね?
問い詰めると、お金が……と俯いて消え入りそうな声で小さく呟きます。
冒険者になりたての時は確かにお金に苦労しますけど……。
私も経験ありますし。え? 私の場合は自業自得!? そんな!
昔の話は置いておいて、ルルちゃんのことです。
このままだといつか大問題を引き起こす気がします。
……よし、暫くうちのパーティで面倒をみましょう!
の、ノアさんそんな呆れた表情を向けないでください。
これは人助けです! 後輩育成です!
今日の収支
銅貨:-50枚(宿泊費×1)
銀貨:+45枚(依頼報酬)
+20枚(マインワーム素材売却費)
-1枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床◎、食事◎)
――――――――
残金:金貨1枚、銀貨52枚、銅貨3枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨18枚、銀貨26枚
(*'-'*) 後輩指導は大切なことです!
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