166話目:鉱石が掘れない原因。

 神聖歴六一〇二年・夜長猿よながざるの月第二六日・天気:―


 ふぁ……やっぱり数時間の仮眠だけだとキツイですね。

 現在、私たちはアルシス第二鉱山の第九階層に来ています。

 えぇ……結局来ちゃいましたよ、ここまで……。

 それなのに掘っても、掘っても鉱石が出ません。本当にここ鉱山ですか?


 愚痴てっても仕方ないので黙って掘りますけどね……。

 けれど現時点での採掘量は依頼の六割程度……ちょっと挫けそうです。

 ルルちゃんも手をマメだらけにしながら頑張っているのに……。

 はぁ~……いっそニコさんかノアさんに岩盤を爆破してもらいますか……。


 そんな危ない考えが脳裏に過ぎったその時、坑道全体が大きく揺れます。

 ちょっ!? まさかニコさんなにかやりました!?

 慌てて彼女の方を確認すると頭を抱えて屈んでいます。

 あれ? ニコさんが犯人じゃない? じゃあ、この揺れは一体!?


 そうして混乱していると突然、坑道の壁が崩れ落ちます。

 開いた穴から出てきたのは、ウネウネと蠢くミミズのような生き物!

 頭に無数の牙を持ち目の退化したこの赤黒い魔物は……マインワーム!

 

 ワームは主に地中で暮らす巨大なミミズの魔物の総称です。

 その中でも鉱山に棲息しているものを特にマインワームと呼びます。

 性格は貪欲。とにかく何でも食べる厄介者です。

 普通はもう少し下層で出てくるはずなんですけど、まさかここで出会うなんて。


 運のなさを嘆いていると、頭を左右に振りながら近付いてくるマインワーム。

 彼らは目が見えないので、臭いや音でこちらを認識します。

 ……つまり出会った今はこちらの正確な位置を掴もうとしている最中。

 仕掛けるなら今が絶好のチャンスです。


 ノアさんに目で合図をし、斬りかかろうとしたその時、坑内に響く金属音。

 するとマインワームは一瞬動きを止めたあと、素早く音源の方へ動き始めます。

 向かう先には戦鎚を地面に落とし震えるルルちゃんの姿が!

 

 迫り来るマインワームに悲鳴すら出せずその場にへたりこむルルちゃん。

 でも、この場合は好都合です。

 私は息を大きく吸い込むと、ワーッと大声を出します。

 その瞬間、再びこちらへ向きを変えるマインワーム。


 予想通りです。より大きな音の方へ来ると思いましたよ!

 口を大きく開け迫ってくるマインワームを躱し、その身体に剣を突き刺します。

 返ってくる妙な手応えに眉を顰めつつ、一旦離脱。

 そこへノアさんが追撃の攻撃魔術を放ちます。

 無数の岩の槍にその身を貫かれのたうち回るマインワーム。

 再度、魔術を放つノアさん……相変わらず容赦ないですね。


 その後、力尽きたマインワームの素材を剥いでいると、体内から大量の鉄鉱石が出てきました。

 先程の妙な手応えの正体はコレですか……なるほど、鉄や銅がまともに採掘できない訳です。

 あれ? ということはこの辺ってマインワームで溢れているんじゃ……。

 

 て、撤収! 撤収です! 急いで上に戻りますよ!

 幸い回収素材で鉄は依頼量に達しました。

 一刻も早くダンジョンから脱出です!


 今日の収支

 (鉱石、ワーム素材など)

 ――――――――

 残金:銀貨88枚、銅貨53枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨18枚、銀貨26枚


 。。゙(ノ><)ノ ヒィ ここは危険地帯です!

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