165日目:掘っても、掘っても。

 神聖歴六一〇二年・夜長猿よながざるの月第二五日・天気:―


 さて、私たちは現在アルシス第二鉱山の第六階層で休憩中です。

 昨日あのまま第七階層へ行くのは流石にルルちゃんが可哀想でしたからね。

 ……そんな彼女は今、岩陰で小さな寝息を立てています。

 ここから先はまともに眠れなくなるので、ゆっくり休んでおくといいですよ。

 ……そうだ、ルルちゃんが起きるまでに少し鉱石採掘をしておきましょう。


 それから二時間後、ようやく第七階層へ向けて出発です。

 あ、先程の採掘では鉱石を採取することはほとんどできませんでした。

 やっぱり危険の少ない浅い層は掘り尽くされているみたいです……。

 はぁ……あまり深く潜ることにならなければいいんですけど……。


 というわけで第七階層へ。

 降りた瞬間からルルちゃんはずっとビクビクしています。

 ここからは鉱山灯の灯りだけですからね……意外と暗いので恐いのも分かります。

 だからといってニコさん! 緊張をほぐすお薬とか怪しげなものを勧めない!

 ノアさんも笑ってないで止めてください。あの子、信じて飲みそうなので!

 

 そんな感じで採掘ポイントを探していると、三匹のコボルドに出会いました。

 コボルド達を見るのは初めてなのかルルちゃんは緊張した様子です。

 ……可愛いんですけどね、コボルド。見た目は直立二足歩行の犬ですし。

 そうだ、いつも通りチーズを渡しましょう。なにか教えてくれるかもです。


 こういう時のために前もって用意していたチーズを渡すと喜ぶコボルド達。

 嬉しそうにチーズを頬張り、そのお礼なのか小さな鍵を手渡してきます。

 透かし彫りで細かな装飾の施された銀色の鍵です……どこの鍵なんでしょう?

 というか用途不明の鍵よりも鉱石の採掘ポイントが知りたいんですけど……。

 しかし、チーズを食べ終えたコボルド達は満足気な表情で去っていきました。

 仕方ない……真面目にコツコツ探しましょう。


 鉱山灯の微かな灯りを頼りに進んでいると、随分と開けた場所に到着しました。

 地図で確認すると第七階層のちょうど中間点辺りですね……。

 よし、ここで少し採掘してみましょう。

 私とノアさん、ソシオは周りを警戒するので、作業はニコさんとルルちゃんに任せます。

 ……ニコさん面倒そうな顔をしないでルルちゃんを見習うのです。


 そうして暫く掘り続けますが……出ませんね。

 掘っても、掘ってもただの石ばかりです……。

 う~ん……あと二階層降りてみますか。

 そう言うと、絶望的な表情を浮かべるルルちゃん。

 ……安心してください。どんなに潜っても九階層までです。

 一〇階層以上になるとこのタンジョン、魔物が強くなる傾向があるみたいですし。

 ……流石に今のパーティでそんな危険は冒せません。


 うん、頑張って下層へ行きましょう!

 ルルちゃん、そんな不安げにしなくても大丈夫です。

 なに、たった数日満足に眠れないだけですよ!

 あはは~今から楽しみですねぇ! ……辛い。

 ……眼帯お姉さんのお勧め任務は今後信じないのです。


 今日の収支

 (銀色の鍵)

 ――――――――

 残金:銀貨88枚、銅貨53枚

     猫銀銭190枚

 借金残高:金貨18枚、銀貨26枚

 

 (ノ_-;)ハア…たかが鉄……されど鉄。

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