164日目:無邪気な冒険者。
神聖歴六一〇二年・
今日は予定通り、アルシス第二鉱山のダンジョン層へ向かいます。
まだ朝早いこの時間に出れば、夕方頃までには帰ってこられるはずです。
しかし道具の確認を終え、いよいよ出発しようとすると突然声を掛けられます。
それは昨日の夕食の時に近くにいた冒険者の女の子でした。
……とても真剣な眼差しを向けてくるんですが……はて?
思わぬ状況に困惑していると、私も一緒に連れて行ってください! と女の子。
……はい!? 貴女どう見ても初心者ですよね!? それでダンジョンとか!
女の子の頼みに驚いていると、お願いします! と深々と頭を下げられます。
うぅ……どうしましょう? 助けを求めて視線を向けると肩を竦めるノアさん。
ニコさんは我関せず、といった様子で鉱山灯を弄っています。
はぁ……出発が遅れますけど少し話を聞いてみましょう。
すると、このルルちゃんという女の子、数日前に冒険者になったばかりだとか。
道理で青い瞳は希望に満ち溢れ、頭の後ろで一つに束ねた金色の髪もサラサラで綺麗だと思いました。
この子、本格的な冒険の危険をまだ知らない普通の少女なんです。
どうしてこんな女の子が冒険者なんかになったんでしょう? 歳も12歳ぐらいですよ?
……うん、家を飛び出した私に人のことは言えませんね。
そんなルルちゃんの防具は革鎧にブーツ。そして武器が……戦槌!?
そのおよそ初心者向きではない得物の理由を聞くと、武器屋で鉱山ならこれだと言われました! といい笑顔で答えてくれます。
……貴女、騙されてますよ、それ。彼女の戦槌はべグ・ド・コルバンと呼ばれる先端が鳥の嘴の様に尖っているタイプです。
確かに鉱山ではツルハシの代わりにもなり役立つでしょうけど、間違っても冒険者になったばかりの女の子に勧める武器じゃありません。
色々危なっかしい彼女の様子に思わず頭を抱えたくなります。
……ここで断って放置したらこの子、絶対に悪い人に捕まりますよね。
なんて言うか、それぐらい無邪気なんですよ……。
……仕方ないですね。今回は連れていきましょう。
諦めて同行を許可すると、ありがとうございます! と嬉しそうなルルちゃん。
喜ぶ彼女を見ているとノアさんに、お人好し、と頭を小突かれます。
……いいじゃないですか。あの笑顔が守れるなら。
そういう訳で、お昼頃になってようやく鉱山へ出発です。
……この時間からだと今晩はダンジョン内で野宿ですねぇ……辛い。
なんてことをノアさんと話していると、驚愕の表情を浮かべるルルちゃん。
ダンジョン内で野宿!? 嘘ですよね!? お風呂は!? ベッドは!? と一人あたふたとし始めます。
……懐かしい反応ですね。その初々しさに思わず笑ってしまいます。
なんで笑うんですか!? って野宿ぐらいで騒いでいたらこの先やっていけませんよ?
ふふっ、今回のダンジョン探索は意外と賑やかになりそうですね。
む……ニコさん! 怪しいお薬をルルちゃんに渡さないでください! 没収です!
今日の収支
(特になし)
――――――――
残金:銀貨88枚、銅貨53枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨18枚、銀貨26枚
(*'-'*) なんか可愛いです。
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