160日目:いつかきっとまた。
神聖歴六一〇二年・
マーガの街を出港して三日目。ついに王都タルデが見えてきました!
小高い丘の上に佇み朝日に輝くのは白亜の王城・ブランアンジュ。
海上から望むその城はまさにこの王国の象徴として相応しい美しさです。
これを見れただけでも王都へ来た甲斐がありましたね。
そのまま暫く海上から王城を眺めた後、私たちの船はゆっくり港へ入ります。
港に船を停泊させていると、ケット・シーさんが三人ほど訪ねてきました。
どうやら運んできた猫又商会の荷物を引き取りに来たようです。
ようやく到着したのに休む間もなく荷降ろし作業なんて……。
愚痴ってる場合じゃないですね……ササッと終わらせてゆっくりしましょう。
しかし、全ての作業を終えた頃には、すっかりお昼になっていました。
まさか帰りの積み荷もあるなんて……。
はぁ……沢山働いたのでもうお腹がペコペコです。
近くのお店で昼食を終えると、いよいよミアさんとお別れの時間です。
彼女は載せた荷物を急いでマーガの街へ運ばなくてはなりません……。
一人船に乗り込み、出港準備を黙々と進めるミアさん。
その姿を無言で見詰めていると、ノアさんにコツンと頭を小突かれます。
……分かってますよ……最後のチャンスだって。
深呼吸をし、勇気を振り絞って船に乗り込みます。
私に気が付くと、どうしたにゃ? 忘れ物にゃ? と首を傾げるミアさん。
えぇ……確かに忘れ物です。大きな、大きな忘れ物です。
不思議そうにするミアさんにゆっくり近付くと、彼女を力一杯抱き締めます。
突然のことに目を白黒させ、にゃにゃにゃ!? と慌てるミアさん。
そんな彼女に私は自分の気持ちを素直にぶつけます。
ずっとずっと一緒にいてください。折角出会えて、仲間になったんです!
ミアさんと冒険したいところがまだまだ沢山あります。
遺跡やダンジョン、遠くの国々、皆で行けばきっと楽しいです。
大切な仲間のミアさんと離れたくありません。ミアさんが大好きだから!
それは駄々をこねる子供のような自分勝手で我が侭な理由。
けれど、嘘偽りない本当の気持ち。
もの分かりの良い大人の振りをやめた素直な想い。
けれど、それでもやはりミアさんは首を横に振ります。
ごめんにゃ~。ありがとうにゃ~。私も大好きにゃ。
そう笑顔で見詰めてくる彼女の瞳は薄らと涙で濡れていました。
そうして私が降りると、船はゆっくり動きだします。
答えは分かってたんです。でも気持ちは伝えたかった。
ふふっ、やっぱり私はまだまだ子供ですね。
遠退く船を見送っていると、ミアさんが手を振りながら大声で叫びます。
船がいる時はいつでも呼んでにゃ~! 離れていてもずっとずっと仲間だからにゃ~!
……はい……ずっとずっと仲間です!
その言葉に涙ぐんでいると、ノアさんが優しく頭を撫でてくれます。
うん、もう泣きません。冒険者に別れはつきものです。
それに、冒険していればいつかきっとまた出会えます。
今日の収支
銀貨:-2枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床◎、食事◎)
――――――――
残金:銀貨96枚、銅貨21枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨18枚、銀貨26枚
(ノ_・。) 別れは悲しいものです。
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