152日目:ふと昔を思い出して……。
神聖歴六一〇二年・
はぁ……憂鬱です。雨が降っているので余計に気が滅入ります。
これも全て釣り大会の優勝賞金が消えたせいです……辛いです。
釣り上げたホグフィッシュも所有権がなくて売却できませんでしたし……。
実はあの金貨二枚、釣ったお魚の買取価格も含めての賞金だったんです。
もっとよく大会規約を読んでおくべきでした……はぁ~、溜め息ばかり出ます。
……そういえば、ここ最近冒険者らしいお仕事をしていませんねぇ。
……私はこんな所で一体なにをやっているんでしょう?
ベッドの上でゴロゴロしていると、ふとそんな思いが込み上げてきました……。
起き上がり枕元の兎リュックから一冊の本を取り出します。
【ルナの冒険記】、幼い頃の私が冒険者に憧れる切っ掛けを作った冒険物語。
読み始めると当時の様々な記憶が、想いが蘇ってきます。
挫けず前に進み、明るく楽しくその時々を精一杯生きていた主人公。
かけがえのない仲間たちと苦楽を共にし多くの冒険を乗り越えた主人公。
……そんな主人公や仲間たちの姿に憧れ、いつか自分もと夢を見ていたのに。
……現実はどうでしょうか?
あんな物語に書かれたような心躍る冒険がどれだけあったでしょう……。
実際は日々を生きるために毎日、毎日同じような依頼の繰り返しです。
そんな中でノアさん達みたいな仲間に出会えたのは凄く幸運でしたけど……。
でも、だからこそ私はもっと冒険したい。彼女達と色々なところに行きたい。
……それなのに……はぁ……止めましょう。考え出すときりがありません。
これもきっと全ては借金がいけないんです……。
お昼になりましたけど……雨、止みませんねぇ。でも、お仕事に行かないと。
……そうだ、たまには一人で依頼を受けるのもいいかもしれませんね。
お金は宿の受付に預けておけば大丈夫でしょう……少し一人になりたいです。
そんなことを思いながら、冒険者ギルドへ向かいます。
あ、ソシオは連れていきますよ。荷物持ちです。
しかし、クエストボードにはいい依頼がありませんでした。
……仕方がないので森へ行って適当に薬草採取でもすることにします。
薬草採取とかいつ以来でしょう? 凄く懐かしい気がしますね。
確か一番最初に受けた依頼も薬草採取でしたっけ……。
あの頃は日に銅貨五枚を稼ぐのも大変で毎日泣きそうでした……。
まぁ、そんな生活をどこかで楽しんでいましたけど。
ふふっ、思い出したらなぜか涙が出てきました……変ですね。
暫く夢中になって薬草採取をしていると辺りはすっかり暗くなっていました。
適当に歩いたのでここがどこか分かりませんし、今移動するのは危険ですね。
……今日はここで野宿にしましょう。ソシオもいますし寂しくありません。
テントを張り、夕食代わりの干し肉を齧りつつ、ぼーっと焚火を眺めます。
……冒険者って一体なんなのでしょうねぇ。
その答えのない疑問に考えを巡らせながら、夜はゆっくり更けていきました。
今日の収支
(手元にないので不明)
――――――――
残金:金貨2枚、銀貨1枚、銅貨21枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨18枚、銀貨26枚
(_ _。) はぁ……冒険者って……。
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