132日目:……飲んじゃいました。

 神聖歴六一〇二年・月見羊つきみひつじの月第二三日・天気:晴


 はぁ、はぁ、はぁ……つ、疲れました……。

 ……でも、どうにか第一階層まで逃げ切りましたよ。

 大海蛇だいかいじゃ・シーサーペント……陸上でもあんなに動きが素早いなんて……。

 途中からソシオが皆を背に乗せて走ってくれたので助かりました……。

 よし、地上まであとちょっと……もう少し頑張りましょう。


 ……けれどダンジョンを歩く皆の足取りは非常に重いです。

 虫の大群からの逃走に、モンスターハウス、最後の大海蛇……。

 全員の疲労はピークに達しています。

 ……この状態で大蟹の大群とかに出会ったら万事休すです。

 相手にできても一匹が限界でしょう……。


 とか思っていたら、前方に現れる大蟹三匹……。

 ダンジョンってどうしてこう意地悪なんですかね?

 ……疲れ果てている時に限って、次から次に問題が起こります。

 まるで意思を持って冒険者を襲ってくるみたいです……。

 これがきっとダンジョンが牙をむくってやつなんでしょうね。


 私が小剣を抜くと、三叉槍さんさそうと丸盾を重そうに構えて横に並ぶミアさん。

 一匹が限度にゃー、と言い浮かべる笑顔にもいつもの元気がありません。

 私も相手にできるのはノアさんと協力して一匹がやっとです。

 ……残り一匹……ニコさんには流石に任せられませんし……。


 鋏を打ち鳴らしながら迫る三匹の大蟹。

 その姿に絶望を感じていると、飲みますか? と目の前に差し出される小瓶。

 それはニコさんがよく飲んでいた黄緑色のお薬でした。

 使えば不眠不休で働けるとか自慢していた、例のアレです。


 ……効果はニコさんで実証済み……この状況では仕方ありませんね。

 ミアさんとそれぞれ受け取り、一気に飲み干します。

 その瞬間、喉を焼く強烈な甘み……うぅ、ベタベタします。吐きそうです。

 けど我慢して飲み込むと……急に体が軽くなってきました!

 ミアさんも目を丸めて驚いています……これなら戦えるかもしれません!


 結果は大勝利です。なんか今までで一番楽だった気がしますね!

 この調子ならまだまだ全然余裕です!

 そんな私とミアさんの様子に興味を惹かれたのか、小瓶を貰おうとするノアさん。

 って、待つのです! ノアさんは飲んじゃダメです!

 慌てて止めるとノアさんから凄く不満そうな顔で見つめられます。

 ……うっ……でも、こんな体に悪いお薬を進んで飲むことはないのです。


 その後、数度の戦闘を終え、どうにかダンジョンを脱出できました……。

 これもお薬を飲んでから疲れが嘘のように消えたお陰ですね……。

 ……しかし、これだけ効果が高いと後々の反動が怖いです。

 やはりノアさんには飲ませなくて正解だった気がします。


 さて、それじゃあ、街に帰りましょう。

 衛兵さんに大海蛇のことは伝えましたが、ギルドにも急いで報告しないと……。

 はぁ……ゆっくり休めるのはまだ先ですねぇ……早くベッドで寝たいです。


 今日の収支

 銅貨:+20枚(ミアさんへの支払い後の報酬)

 銀貨:+37枚(ミアさんへの支払い後の報酬)

     -4枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床☆、食事☆)

――――――――

残金:金貨3枚、銀貨81枚、銅貨11枚

    猫銀銭190枚


*o_ _)oバタッ あぁ……やっとベッドで寝れます。

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