131日目:壁が……動く。

 神聖歴六一〇二年・月見羊つきみひつじの月第二二日・天気:―


 海岸洞窟ダンジョンに潜って今日で四日目……凄くキツイです。

 あの戦闘後でもダンジョン内なので満足に休憩できてないんですよ。

 ……モンスターハウスの恐ろしさを改めて実感します。


 アレをどうにか対処しても、そのあと体力や物資的に辛いんです。

 そうして判断を誤りパーティ全滅……。

 よくある話ですけど、実際になってみると笑えませんね、これ。

 ……あの時引き返したのは、やはり正解だった気がします。

 

 そんなことを考えながら進んでいると、通路が行き止まりに……。

 おかしいですね……地図上だとここは十字路のはずなんですけど……。

 もしかして……また迷いましたか?

 地図を睨んだまま固まっていると、急にノアさん達が騒ぎ始めます。

 え? どうしました? 壁? 壁が動いたってなにを言ってるんです?


 唐突に意味不明なことを言うノアさん達に呆れながら前を向くと……。

 うん、確かに目の前の通路を塞ぐ壁が右にズルズルと動いてます……。

 見間違えとかじゃないですね……ど、どういうことですか?

 

 恐る恐る壁に近付き、そっと手で触れてみます。

 ひんやりと冷たいです……あと洞窟の壁と違いスベスベしてます。

 試しに押してみると、硬い中にも弾力が……。

 そこまで確認して静かに手を離します。

 ……これ、壁じゃないです! 何かの生き物ですよ!


 驚愕の事実に震えつつ、そのことをノアさん達に報告します。

 その間もズルズルと少しずつ動き続ける壁。

 ぶ、不気味です……一体なんですか、アレ。

 正体不明の存在に恐怖を感じていると、にゃー! と突然叫ぶミアさん。

 今にも泣き出しそうな表情です……こ、これは悪い予感がします!


 ミアさんを落ち着かせて話を聞くと、動く壁の正体を教えてくれました。

 道を塞いでいる物の正体、それは――


 ――大海蛇だいかいじゃ・シーサーペント。


 ……大海蛇は小さいものでも体長が百メートルを超える巨大な海蛇です。

 普段は海で暮らしていますが、たまに陸地にも上がってくるんだとか……。

 だからって、このタイミングで現れますか!?


 あまりの恐ろしさからくる吐き気を堪えながら、地図に目を落とします。

 大海蛇の進路を予測するんです……もし正面から遭遇したら絶対に助かりません。

 ……目の前の通路と周囲の通路の太さを地図上で比べていきます。

 眼前の通路を塞ぐほどの巨体なら、それより細い道は通れないはずです……。


 地図を睨み続けること十数分……どうにかなりそうなルートを発見しました!

 そして、目の前の通路もようやく通れるようになります。

 急ぎますよ、皆! 大海蛇に見つかる前に第一階層へ逃げるんです。


 しかし動き出そうとした瞬間、現れたにゃー! と涙目で叫ぶミアさん。

 振り返るとそこには金色に輝く二つの眼が浮かんでいました。

 !? 見つかってた! 不味いです! 皆、走って!

 叫ぶと同時、全員で一斉に駆けだします。


 ……第二階層に来てから走ってばかりです! 最悪です!



 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:金貨3枚、銀貨47枚、銅貨91枚

    猫銀銭190枚

(未換金:大蟹×12 マナ結晶×120)


 。。゙(ノ><)ノ ヒィ 丸呑みは嫌です~!

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