133日目:狂った錬金術師再び。

 神聖歴六一〇二年・月見羊つきみひつじの月第二四日・天気:晴


 うぅ……痛い……痛いです。体のあちこちが悲鳴を上げています。

 ベッドから起き上がるどころか寝返りを打つのも苦痛です。

 今日のお仕事は無理かもしれません……。


 そうしているとノアさん達が部屋を訪ねてきました。

 でも、私はピクリとも動けません……声を出すのさえ億劫です。

 ノアさんはベッドの横に腰を下ろすと、私を心配そうに見つめてきます。

 そんな彼女に私は視線を返すことしかできません……。


 けれど、私のこの最悪な状況を見て笑顔の人物が一人。

 ニコさんです! 目を輝かせ嬉々としてメモを取ってます。

 ニコさん、貴女なにか知ってますね!? 説明! 説明を求めます!

 と、言ったつもりなのに、出てくるのはうぅ~うぅ~という唸り声……。

 って、なに嬉しそうにメモしてるんですか!? 怒りますよ!?


 暫くするとメモを一旦書き終え満足そうにするニコさん。

 その彼女の両肩をノアさんがガシッと掴みます。

 原因は貴女? と微笑みながら問い掛けるノアさん……でも、目が笑ってません。

 ギリギリと肩に食い込む指先に、ニコさんは涙目で頷きます。

 それにノアさんは溜め息を吐きつつ、両手を肩から離しました。


 解放されると、肩をさすり目に薄っすら涙を浮かべて説明を始めるニコさん。

 話によると、原因は昨日のお薬でした。

 ……使用すると副作用で一日ほどまともに動けなくなるそうです。

 って、待ってください……ニコさんはいつも普通に飲んでましたよね?

 もしかして副作用を抑えるお薬があるんですか!?


 やっと出るようになった声で尋ねると、首を小さく横に振るニコさん。

 なんでも、普段は希釈して飲むので副作用はほぼないんだそうです……。

 衝撃の事実に絶望していると、ニコさんは笑顔で再びメモを取り始めます。

 原液を飲んだ際のデータは貴重なのでぜひ観察させてくださいって貴女……。

 ノアさん……やっぱりこの子、狂った錬金術師なのです!


 そう騒ぎたくても騒げずにいると、部屋のドアがゆっくり開きます。

 そこに現れたのは今にも倒れそうな感じのミアさん。

 体がキツイ原因を知ってるかにゃ~? と額に脂汗をにじませながら問う彼女。

 その様子にニコさんが目を輝かせるのを私は見逃しませんでした。

 凄いです! 種族によって副作用に差がある!? とニコさんわくわく顔です。


 楽しげなニコさんに、やっぱりお前が原因かにゃー!? と怒るミアさん。

 彼女が近付くと、フシャーッと威嚇までします。

 けれど、そんなことはお構いなしにニコさんはメモを取り続けます。

 ……ニコさん……元気になったらお仕置です。……ミアさんはごめんなさい。


 その後、体力の限界で倒れたミアさんはソファーに寝かされ、私と一緒にノアさんのお世話になることに……。

 ……あとでお礼を言わないといけませんね。


 はぁ……今後はニコさんのお薬には極力頼らないようにしましょう。

 ……そんな後悔をしつつ私は目を閉じました。明日は動けるといいですね。



 今日の収支

 銀貨:-5枚(宿泊費×4+ソシオ)(寝床☆、食事☆)

 ――――――――

 残金:金貨3枚、銀貨76枚、銅貨11枚

     猫銀銭190枚


 (_ _;)…パタリ 動けないのです……。

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