104日目:出会いは最悪だったけど……

 神聖歴六一〇二年・七夜馬ななようまの月第二六日・天気:晴


 走り続けて……ついに外です! やったダンジョンを脱出しました!

 全員無事に突破できたんです! 夢みたいです!

 しかし、そう喜んだのも束の間、いきなり誰かに胸倉を掴まれます。


 相手は私達を地上まで先導してくれたパーティの蒼い髪の魔術師さん。

 うっ、凄く怒っています。その背後のメンバーも言わずもがなです。

 こ、これは一刻も早く謝らないと……。

 そう思ったんですが、私達の間に割って入る数人の人影。


 それは白銀の全身鎧に身を包んだ衛兵さん達でした。

 彼らは極めて事務的な口調でギルドカードの提出を求めてきます。

 あ、これがブランさんの言っていたダンジョン入り口での確認ですね。


 周囲の人間の冒険者カードを一人ずつ見て回る衛兵さん達。

 ってアレ? ブランさんとマヴロさんまで冒険者カードを出しています。

 驚いていると、単独で行商する商人の間では珍しくないですよ、とブランさん。

 なるほど。でも、だからこのダンジョンに詳しかったんですね。

 色々納得していると、突然肩を掴まれました。

 相手は先程と同じ蒼い髪の魔術師さん。

 逃がさないよって、も、勿論逃げる気なんてないですよ!


 衛兵さん達が去った後、慌てて頭を下げて謝罪します。

 非常事態とはいえアレは明らかなマナー違反です。

 深々と私が頭を下げると、背後のノアさん達もそれに続きます。

 

 すると、事の理由を尋ねてくる魔術師さん。

 ここは素直に話しましょう……それが礼儀です。

 説明を終えると魔術師さんは大きな溜め息を吐きます。

 どうやら凄く呆れてる様子です……すみません。


 その後の話で、今回は許してもらえる事になりました。

 但し、あのダンジョンで討伐したオークの八割を渡すのが条件です。

 ……大惨事になる可能性もあった訳ですし、これは仕方ありません。

 寧ろたったそれだけで済むなら安い位です。

 そう思って、素直に了承すると、目を丸めた後大笑いされました。

 な、なんで笑うんですか!?


 困惑していると、人が良過ぎるよ、と魔術師さん。

 普通、こんな提案をされたら怒るものだと。

 笑い終えると、改めて自己紹介をされました。

 魔術師さんはパーティ・アルアンカーのリーダーでシユさんと仰るそうです。

 

 そして、そっちは? と訊いてくるシユさん。

 笑わないで下さいね? と前置きして躊躇いがちにパーティ名を教えます。

 けれど数秒固まった後、大笑いするシユさん一行。

 流石はナメークハンターズ……相変わらずの破壊力です。


 ひとしきり笑うと、出会いは最悪だったがアンタ達みたいなのとは仲良くしていきたいと、握手を求めてくるシユさん。

 こ、こちらこそ、よろしくお願いします!

 

 握手を終えると、シユさん達は再びダンジョンへ潜ると言い去って行きました。

 その際、地図を一枚渡されます。

 印の通り進めば一日程で安全にマーガの街に着けるって、シユさん!

 本当にありがとうございます!


 ……よし、私達も出発しましょう! マーガの街までもうひと頑張りです!!


 今日の収支

 オーク:-8

 ――――――――

 残金:銀貨4枚、銅貨1枚

 猫銀銭90

(未換金素材:オーク×2)


 (*'-'*)エヘヘ 良い知り合いが増えたのです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る