102日目:正解はどの通路?

 神聖歴六一〇二年・七夜馬ななようまの月第二四日・天気:―


 どうにか無事ダンジョンへ進入し、今日はブランさんの地図を頼りに探索を行っています。微妙に構造が変わっているので慎重に進まないといけません。

 

 今回のダンジョンは洞窟のような造りをしています。

 壁や地面はゴツゴツとした岩肌です。

 暗闇だと歩き難いですが、このダンジョン内には明りがあったので助かりました。

 どうやら壁や地面の岩に、光を放つ鉱石を含んでるみたいです。

 本当、色々珍しいタイプのダンジョンですね、ここ。


 さて、明かりもあるので楽に進めると喜んでいたんですが……。

 ある分かれ道で問題が発生しました……地図に記された道は三本。

 しかし実際にある通路は八本……五本も多いです!

 

 ……地図を読み間違えた?

 そう思い慌てて確認してみますが、八本に分岐した道は何処にもありません。

 つまりこの地図が発行された後に、新しく出来た道という事ですか。

 やっぱり古い地図を頼りにダンジョンへ進入するは駄目ですね。

 廃鉱の時に上手くいったので今回も大丈夫と思ってましたが……反省です。


 どうするか悩んでいると、独り先へ歩き始めるマヴロさん。

 ちょっ!? 待って下さい!

 驚いていると、彼はその鼻を得意げに鳴らします。

 まさか……臭いで経路が分かるんですか!?

 訊くと、ニヤリと笑うマヴロさん……ほ、本当なんでしょうか?


 と、とりあえずマヴロさんの後を追いかけ、中央の通路を進みます。

 暫く先程と同じような通路を歩いていると、突然足を止めるマヴロさん。

 ノアさんやブランさんも何かに気が付いたようです……嫌な予感がしますね。


 腰の小剣に手を掛け、いつでも抜ける準備を。

 ケルピーはニコさんに預け一緒に後方で待機してもらいます。

 暫くして通路の陰から現れたのは、猪の頭を持った一人の亜人。


 ――オーク!!


 第一階層からこんなのが出るんですか、このダンジョン!?

 驚く暇もなく、私達に気が付くと一目散に駆け出してくるオーク。

 その手には巨大な戦斧!

 近付き、鋭く振り下してくるそれを、紙一重で躱します。


 戦斧を握った右手を斬ろうとすると、それを左手でけん制するオーク。

 その隙に、がら空きになった腹部を狙うのは、ノアさんの攻撃魔術!

 オークの腹を貫くのは巨大な氷の槍!

 

 けれどオークは倒れず、雄叫びを上げながら再び戦斧を持ち上げます。

 しかしその瞬間、後ろから忍び寄る影が!

 マヴロさんです! 気付いた時には、飛び掛かりその牙を頸部へ突き立てます。

 苦悶の唸り声を上げながら、ゆっくり地に倒れ伏すオーク。

 その後、完全に息の根が止まったのを確認してやっと口を離すマヴロさん。


 凄いですね。これが妖精を護るクー・シーの実力ですか。

 その勇猛さに驚いていると、これで今日は良い肉が食える、と嬉しそうなマヴロさんの独り言を耳が拾いました。


 ……まさか、肉食べたさにこの道を選んだ訳じゃないですよね?

 問うと、澄ました顔で素知らぬ風のマヴロさん……こ、このお方は!!


 もうっ! 一刻も早く脱出するのです!!



 今日の収支

 オークの各種素材。

 ――――――――

 残金:銀貨4枚、銅貨1枚

 猫銀銭90枚


 (ノ_-;)ハア…マヴロさん……信じてたのに。

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