101日目:伸縮自在。

 神聖歴六一〇二年・七夜馬ななようまの月第二三日・天気:晴


 昨日はダンジョンの入口がある岩場近くの森で、野宿をしました。

 ダンジョンに入れば満足に休めないので、最後のまともな休息です。

 まぁ、盗賊を警戒していたので、あまりゆっくりは出来ませんでしたけどね。


 朝食を終え、ダンジョンの入口があるという岩場へ向かいます。

 暫く歩き続けると森が開け、姿を現したのは岩場というか切り立った崖。

 ここに本当にダンジョンの入口が? 見張りの衛兵さんも居なさそうですし……。


 困惑していると、マヴロさんが独り先へ進んで行きます。

 慌てて後を追った先には、縦穴の開いた崖の岩肌が!

 大きさは成人男性がギリギリ通れる位。

 ここが入口ですか? 訊くと小さく頷くマヴロさん。


 でも、どうしてここには衛兵さんがいないんでしょう?

 コレだとDランク未満の冒険者も入り放題です。

 疑問に思っていると、入口をよく見て下さい、とブランさん。

 

 その言葉を受けて、入口の穴の中を少しだけ覗いてみると……。

 うわぁ……入った瞬間、急転直下の断崖絶壁です。しかも相当深いですよ……。

 あと周囲の岩肌が妙にスベスベしてます……。

 これ降りるのはまだ大丈夫ですが、再び登るとなると不可能に近い気が……。


 予想外の光景に言葉を失っていると、ブランさんが教えてくれます。

 このダンジョンで衛兵がいない入口は、こういった進入または脱出困難な場所が殆どなんだとか。

 なので、上手くダンジョンに入り込んでも同じ出入口は使えず、結局は衛兵が護っている場所を通るしかないと。

 つまりDランク未満の冒険者が不正に進入しても、最後は捕まってしまうと。

 なるほど……衛兵が居ないのにはそんな訳が。


 さて、疑問が解決したところで、そろそろダンジョンへ進入しましょう。

 近くの木に縄を縛り、重りを付けて穴の中に垂らします。

 縄を慎重に降ろしていくと、少ししてカツンッという小さな手応えが……。

 どうやら底に着いたみたいです。縄は……ギリギリでしたね。


 では早速、降りて――と思ったんですが、ケルピーの事を忘れてました!

 穴はケルピー程大きくありませんし、よしんば入れてもあの断崖絶壁。

 縄を使えないケルピーが降りるのは不可能です!

 完全に盲点でした……どうしましょう。折角仲良くなったのにお別れとか……。


 悩んでいると、多分大丈夫だよ? とノアさん。

 そしてケルピーに近寄り耳元で何かを話し始めました。

 話を聞き終え、ケルピーが納得した様に頷くと、その体が淡く輝き始めます。

 一瞬の後、光が消えるとそこに現れたのは、肩に乗る程小さくなったケルピー!


 その姿に唖然としていると、伸びるんだから縮むのも簡単だよ、とノアさん。

 そ、そういうモノなんですか……。

 あと馬具まで小さくなったのはどういう理屈なんでしょう……不思議です。

 まぁ、でもこれでダンジョン内に連れて行けますね! 良かったです!

 あ、因みにマヴロさんはノアさんが背負う予定です。


 さぁ、それではいよいよダンジョンへ進入です!


今日の収支

 特になし。

 ――――――――

 残金:銀貨4枚、銅貨1枚

    猫銀銭90枚


(*'-'*) ケルピー可愛い。ハッ! 今はダンジョンに集中です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る