101日目:伸縮自在。
神聖歴六一〇二年・
昨日はダンジョンの入口がある岩場近くの森で、野宿をしました。
ダンジョンに入れば満足に休めないので、最後のまともな休息です。
まぁ、盗賊を警戒していたので、あまりゆっくりは出来ませんでしたけどね。
朝食を終え、ダンジョンの入口があるという岩場へ向かいます。
暫く歩き続けると森が開け、姿を現したのは岩場というか切り立った崖。
ここに本当にダンジョンの入口が? 見張りの衛兵さんも居なさそうですし……。
困惑していると、マヴロさんが独り先へ進んで行きます。
慌てて後を追った先には、縦穴の開いた崖の岩肌が!
大きさは成人男性がギリギリ通れる位。
ここが入口ですか? 訊くと小さく頷くマヴロさん。
でも、どうしてここには衛兵さんがいないんでしょう?
コレだとDランク未満の冒険者も入り放題です。
疑問に思っていると、入口をよく見て下さい、とブランさん。
その言葉を受けて、入口の穴の中を少しだけ覗いてみると……。
うわぁ……入った瞬間、急転直下の断崖絶壁です。しかも相当深いですよ……。
あと周囲の岩肌が妙にスベスベしてます……。
これ降りるのはまだ大丈夫ですが、再び登るとなると不可能に近い気が……。
予想外の光景に言葉を失っていると、ブランさんが教えてくれます。
このダンジョンで衛兵がいない入口は、こういった進入または脱出困難な場所が殆どなんだとか。
なので、上手くダンジョンに入り込んでも同じ出入口は使えず、結局は衛兵が護っている場所を通るしかないと。
つまりDランク未満の冒険者が不正に進入しても、最後は捕まってしまうと。
なるほど……衛兵が居ないのにはそんな訳が。
さて、疑問が解決したところで、そろそろダンジョンへ進入しましょう。
近くの木に縄を縛り、重りを付けて穴の中に垂らします。
縄を慎重に降ろしていくと、少ししてカツンッという小さな手応えが……。
どうやら底に着いたみたいです。縄は……ギリギリでしたね。
では早速、降りて――と思ったんですが、ケルピーの事を忘れてました!
穴はケルピー程大きくありませんし、よしんば入れてもあの断崖絶壁。
縄を使えないケルピーが降りるのは不可能です!
完全に盲点でした……どうしましょう。折角仲良くなったのにお別れとか……。
悩んでいると、多分大丈夫だよ? とノアさん。
そしてケルピーに近寄り耳元で何かを話し始めました。
話を聞き終え、ケルピーが納得した様に頷くと、その体が淡く輝き始めます。
一瞬の後、光が消えるとそこに現れたのは、肩に乗る程小さくなったケルピー!
その姿に唖然としていると、伸びるんだから縮むのも簡単だよ、とノアさん。
そ、そういうモノなんですか……。
あと馬具まで小さくなったのはどういう理屈なんでしょう……不思議です。
まぁ、でもこれでダンジョン内に連れて行けますね! 良かったです!
あ、因みにマヴロさんはノアさんが背負う予定です。
さぁ、それではいよいよダンジョンへ進入です!
今日の収支
特になし。
――――――――
残金:銀貨4枚、銅貨1枚
猫銀銭90枚
(*'-'*) ケルピー可愛い。ハッ! 今はダンジョンに集中です。
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