94日目:荷車と白猫。
神聖歴六一〇二年・
朝起きてテントを出ると、ノアさんが朝食の支度を始めていました。
あ、私も手伝いますよ! あれ? ニコさんの姿が見えませんね。
ノアさんに訊くと、森に薬草を詰みに行ったと……好きですねぇ本当。
食事を終えたら、再びマーガの街へ向けて出発です。
今日は曇なので暑くなくていいですね。
これならニコさんのお薬に頼らなくてもバッチリです。
街道を暫く歩いていると、カンカンカンと何かを叩く音が聞こえて来ました。
音の方へ目を向ければ、前方に小さな荷車が停まっています。
大きさは普通の荷車の半分ほど。近くには大きな黒い犬が寝ています。
色々妙な組み合わせですね……ちょっと面白そうです!
そう思い近付いて声を掛けると音が止み、荷車の下から誰かが出てきます。
現れたのは、真っ白い猫!?
唖然としているとその白猫は、何か御用ですか? と訝しげに尋ねてきます。
猫が喋った!? って、あぁ! ケット・シーですか!
直に出会うのは初めてなので驚いてしまいました。
私の様子に苦笑しながら、この辺では珍しいですからねぇ、とケット・シーさん。
挨拶をして改めて名前を伺うと、ケット・シーさんはブランさんと仰るそうです。
話をするとブランさんもマーガの街へ行く途中なんだとか。
それで荷車を修理している所に、私達が声を掛けたみたいです。
故障ですか……過去の護衛任務が思い出されますね……。
荷車や馬車の構造って意外と複雑なんですよ。
車軸なんかが壊れたら素人ではまず修理出来ませんからね。
だからブランさんも困り果てているそうです。
……この辺は村もないので修理の職人さんも簡単に呼べませんしね。
折角知り合ったので力を貸してあげたいですが……。
悩んでいると、私が直しましょうか? とニコさん……出来るんですか!?
思わず訊き返すと、ニコさんはコクリと小さく頷きました。
ブランさんの了解を得ると、ニコさんは荷車の下へ潜り込みます。
トントン、カンカン、荷車の底から一定のリズムで響く音。
暫くすると、鼻の頭を油で汚しながら、笑顔で荷車の下から出てくるニコさん。
直りましたぁ~って早いですね!? ブランさんも目を丸めています。
恐る恐る荷車を犬に引かせると……動きました!!
凄いですねニコさん。ブランさんもこれで間に合うと大喜びです。
そして、別れの挨拶もそこそこに急いで出発するブランさん。
その際ブランさんから荷車のお礼にと猫銭とカードを一枚渡されました。
マーガの街へ来たら是非寄って下さいと。
……さて、私達も行きましょう。予定より少し遅れ気味です。
野営予定地に着いたのは日が少し暮れてから。
今回はニコさんもテント張りを手伝ってくれました。
ちょっと楽しそうだから私もやりたいってニコさん……。
次からも是非手伝って下さい……お願いしますね?
まぁ、こんな感じで今日も無事に一日が終わるのでした。
今日の収支
猫銀銭:+60枚(ブランさんのお礼)
猫又商会会員カード(ブランさんのお礼)
――――――――
残金:銀貨4枚、銅貨1枚
猫銀銭90枚
(-ω-;)ウーン ニコさん……いい子なんですけどねぇ……。
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