94日目:荷車と白猫。

 神聖歴六一〇二年・七夜馬ななようまの月第一六日・天気:曇


 朝起きてテントを出ると、ノアさんが朝食の支度を始めていました。

 あ、私も手伝いますよ! あれ? ニコさんの姿が見えませんね。

 ノアさんに訊くと、森に薬草を詰みに行ったと……好きですねぇ本当。

 

 食事を終えたら、再びマーガの街へ向けて出発です。

 今日は曇なので暑くなくていいですね。

 これならニコさんのお薬に頼らなくてもバッチリです。

 

 街道を暫く歩いていると、カンカンカンと何かを叩く音が聞こえて来ました。

 音の方へ目を向ければ、前方に小さな荷車が停まっています。

 大きさは普通の荷車の半分ほど。近くには大きな黒い犬が寝ています。

 色々妙な組み合わせですね……ちょっと面白そうです!


 そう思い近付いて声を掛けると音が止み、荷車の下から誰かが出てきます。

 現れたのは、真っ白い猫!?

 唖然としているとその白猫は、何か御用ですか? と訝しげに尋ねてきます。

 猫が喋った!? って、あぁ! ケット・シーですか!

 直に出会うのは初めてなので驚いてしまいました。

 私の様子に苦笑しながら、この辺では珍しいですからねぇ、とケット・シーさん。

 挨拶をして改めて名前を伺うと、ケット・シーさんはブランさんと仰るそうです。

 

 話をするとブランさんもマーガの街へ行く途中なんだとか。

 それで荷車を修理している所に、私達が声を掛けたみたいです。

 故障ですか……過去の護衛任務が思い出されますね……。

 荷車や馬車の構造って意外と複雑なんですよ。

 車軸なんかが壊れたら素人ではまず修理出来ませんからね。


 だからブランさんも困り果てているそうです。

 ……この辺は村もないので修理の職人さんも簡単に呼べませんしね。

 折角知り合ったので力を貸してあげたいですが……。

 悩んでいると、私が直しましょうか? とニコさん……出来るんですか!?

 思わず訊き返すと、ニコさんはコクリと小さく頷きました。


 ブランさんの了解を得ると、ニコさんは荷車の下へ潜り込みます。

 トントン、カンカン、荷車の底から一定のリズムで響く音。

 暫くすると、鼻の頭を油で汚しながら、笑顔で荷車の下から出てくるニコさん。

 直りましたぁ~って早いですね!? ブランさんも目を丸めています。


 恐る恐る荷車を犬に引かせると……動きました!!

 凄いですねニコさん。ブランさんもこれで間に合うと大喜びです。

 そして、別れの挨拶もそこそこに急いで出発するブランさん。

 その際ブランさんから荷車のお礼にと猫銭とカードを一枚渡されました。

 マーガの街へ来たら是非寄って下さいと。

 ……さて、私達も行きましょう。予定より少し遅れ気味です。

 

 野営予定地に着いたのは日が少し暮れてから。

 今回はニコさんもテント張りを手伝ってくれました。

 ちょっと楽しそうだから私もやりたいってニコさん……。

 次からも是非手伝って下さい……お願いしますね?


 まぁ、こんな感じで今日も無事に一日が終わるのでした。


 今日の収支

 猫銀銭:+60枚(ブランさんのお礼)

     猫又商会会員カード(ブランさんのお礼)

 ――――――――

 残金:銀貨4枚、銅貨1枚

    猫銀銭90枚


 (-ω-;)ウーン ニコさん……いい子なんですけどねぇ……。

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