87日目:可愛げのないやつ。
神聖歴六一〇二年・
地下水路に潜ってから今日で四日目。
仮眠だけでは辛くなってきました……ベッドが恋しいです。
けれど第一階層でのラットマン調査が残っている事実……。
そろそろ戻らないと体力的に無理ですね。
という訳で、第三階層でのスライム討伐を終えて引き返す事に。
幸いあの後は順調にスライムが狩れ、依頼のデロドロ液は八瓶確保出来ました。
本当はあと二瓶必要ですけど、帰り道でスライムに出会う事を期待します。
はぁ……でもスライム探しでこんなに苦労するとは思いませんでした。
前はあんなに襲われたのに……本当どうしたんでしょう。
あと今回は出会った全てのスライムが何故か地面の隅で震えてたんですよね……。
まるで何かから身を隠すような感じで……スライムの天敵ってなんでしたっけ?
そんな事を話していると、ノアさんが何かに気付いたようにハッとします。
え? 何です? スライムの不思議行動の謎が解けたんですか?
訊くとノアさんは小さく頷き、私の腰の短剣を指差します。
……はい? この黒竜の短剣が原因なんですか?
ノアさんによると強力な魔物を素材にした武器は他の魔物を警戒させるそうです。
黒竜が素材ともなれば、それこそ竜が近付いて来るほどの威圧感があるだろうと。
……つまり、私達が短剣に感じたあの妙な気配を魔物達も体験してるわけですか。
そ、それは隠れたくもなりますね……あれは本当に怖かったですし。
でも、困りました。事実なら今後の討伐系依頼に影響が出てきます……。
その事に思わず溜め息を吐くと、まるで抗議するかのように微かに震える短剣。
むぅ……文句を言いたいのはこっちですよ。
今でも軽い気持ちで抜くには躊躇う雰囲気を纏っていながらこの短剣は……。
そう思って睨みつけると、短剣からスーッと威圧感が消えていきます。
え? あれ? 気持ちが通じた?
じっと見詰めますが、何の反応もなくただの短剣の様に大人しくなりました……。
指で柄を弾いてみますが、うんともすんとも言いません。
……いえ、普通はそうなんですけどね……これはこれで違和感が。
困惑する私に苦笑するノアさん。
こういう気難しい武器は少しずつお互い慣れるしかないって……そうなんですか?
まぁ、貰ってからまだ六日ですからね……これから仲良くなりましょう。
じゃあ、謎も解けたし先を急ぎますよ!!
そうして暫く進んでいると……ベチャッと頭に何かが落ちてきます。
ヒィィ!? これはもしかして!?
直後、体に痺れたような痛みが走ります! ノアさんの雷系魔術って事は……。
痛みに咳き込みながら、足元を見ればヌラリと光る水溜り。
やっぱりスライムですか! でもこれで納品依頼は達成です!
あぁ……髪がヌメヌメします。
今回はスライム
するとそんな私を嗤うように短剣が微かに震えました……。
……こ、こいつは! 可愛くない! 可愛くないのです!!
今日の収支
(屑マナ結晶×10、デロドロ液10瓶)(昨日分含む)
――――――――
残金:銀貨31枚、銅貨63枚
猫銀銭30枚
\(*`∧´)/ 短剣のくせに生意気! 生意気なのです!!
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