88日目:吼えた!?
神聖歴六一〇二年・
うぅ……ヌメヌメです……気持ち悪いです。
昨日、あれから急にスライムが襲ってくるように……。
原因は黒竜の短剣が周囲へ放っていた威圧感を消したからですよ、きっと。
あぁ、早く帰ってお風呂に入りたい。
そんな愚痴を言いつつ、ようやく第一階層へ到着です。
さて、地下水路の地図を広げラットマンの目撃地点を確認しないと。
結構バラバラですね……第一階層の広範囲に散ってます。
……とりあえず虱潰しに調べましょうか。
暫く歩いていると、石を金属で擦るような音が聞こえてきました。
音のした方を見れば、そこには一匹のラットマンが!
外見は普通の鼠人。ただ一点違う所があるとすればその左手。
そこに白銀の籠手と剣が一体化した妙な武器を装備しています。
小剣の柄を握り注意深く観察していると目と目が合いました。
その瞬間、鳴き声を上げながら私に突進してくるラットマン。
慌てて左に躱すものの、急制動をかけ武器を横薙ぎに振るい再び襲ってきます。
それを咄嗟に抜いた小剣で受け、一旦距離を――
取れない!? 執拗なまでの追撃。
繰り出される左手の斬撃を紙一重で躱し続けます。
ここまで接近されるとノアさんも魔術が使えません。
なんとか隙を作らないと……でもキツイ……ってンッ――!
体を走る激痛。
目に映ったのは右肩に深々と突き刺さる刃。
力が抜け手から離れる小剣。ニヤリと嗤うラットマン。
そして、口を大きく開け私の首筋に牙を突き立てようとしたその瞬間――
――轟く巨竜の咆哮!!
黒竜の短剣が吼えた!? でも考えるのは後!
怯んだ隙に左手で黒竜の短剣を抜き、勢い殺さず狙うのは右肩の刀身!
微かな金属音の後、斬り離される剣と籠手。
予想外の事が立続けに起こり、目を白黒させるラットマン。
そんな鼠人を右肩の痛みに堪えながら力一杯蹴り飛ばし、距離を取ります。
その隙を見逃さず後方から飛来する無数の火球!
ノアさんの攻撃魔術です!!
瞬く間に燃え上がるラットマン。響く断末魔の悲鳴。
……炎が消えた後、灰の山に残ったのは白銀の籠手だけでした。
疲れ果ててその場に倒れ込むと、慌てた様子でニコさんが駆け寄ってきます。
手には黒い液体の入った小瓶。
……何ですかそれ? ボーっとする私を抱き起こし羽交い締めにするノアさん。
……え? えぇ?
困惑する私を余所に、ニコさんが右肩に残った刀身へ布を巻き、巻き。
そして、それを掴んだかと思うと一気に引き抜きます――ンンッ!!
い、痛いです……泣きそうです。
思わず涙目でニコさんを睨んでしまいました。
しかし彼女は真剣な表情で血の流れる傷口に先程の液体を掛け始めます。
するとスーッと溶けるように消えていく痛み。
驚いて傷口を見ると、もう塞がってる!?
唖然とする中、誇らしげに小さな胸を張るニコさん。
……深く考えるのは止めましょう……そういうお薬なんです、きっと。
あぁ、でもこれでようやく帰れますねぇ……早くベッドで寝たい。
今日の収支
(屑マナ結晶×40、デロドロ液10瓶)(昨日分含む)
ラットマンの武器
――――――――
残金:銀貨31枚、銅貨63枚
猫銀銭30枚
(_ _;)…パタリ もう本当疲れました。
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