82日目:新たな短剣。

 神聖歴六一〇二年・七夜馬ななようまの月第四日・天気:曇/晴


 仲間募集の件も気になりますが、今日は武具店に向かいます。

 短剣も早くなんとかしたいですからね。

 

 朝食を終えたら馴染みの武具店へ。

 店内ではお爺ちゃんが掃除をしていました。

 私達に気が付くと何かを怪しむ様子でじっと見詰めてきます。

 あ、その顔は、どうせ何か壊したんだろう? って疑ってますね!?

 今回は普通の製作依頼ですよ! もうっ、私を何だと思ってるんですか。

 少し拗ねた様に言うと、お爺ちゃんは笑いながら謝り依頼内容を尋ねてきます。


 説明を終えると難しい表情で俯き黙り込むお爺ちゃん。

 数分後、お爺ちゃんは口を開かずに店の奥へ消えていきました。

 困惑してノアさんを見ると肩を竦められます……何かいつもと様子が違います。


 不安に思いつつも待っていると、布包みを抱えて戻ってくるお爺ちゃん。

 その中身は一振りの短剣でした。

 見た目は普通の短剣です。でも、何でしょう……この妙な威圧感は。

 鞘は漆黒、素材は恐らく何かの鱗。柄は質感的にミスリル銀?

 

 何です、これ? そう訊くと抜くように促してくるお爺ちゃん。

 ……い、嫌ですよ!? おいそれと抜ける雰囲気じゃないです!

 震えるように小さく首を横に振ると、大丈夫だと言うお爺ちゃん……。 

 ノアさんに助けを求め視線を向けますがサッと逸らされます……は、薄情者!


 二人が見守る中、ゆっくりと短剣の柄を握ります。瞬間、背筋に走る悪寒。

 ヒィィ、これ絶対駄目なヤツですよ!

 で、でも、こうなったら最後までやってやります!

 覚悟を決め一気に鞘から引き抜くと――


 ――現れたのは光輝く乳白色の剣身。


 同時に先程まであった妙な威圧感や悪寒が霧散していきます。

 呆然としていると手を叩きながら喜ぶお爺ちゃん。

 そうして笑いながら短剣について教えてくれます。


 この短剣、なんと黒竜の牙等を素材にして作った物なんだそうです。

 ただ素材の影響もあり持ち手を選ぶ気難しい剣になったんだとか。

 だからちょっとお前さんで試してみたって……お爺ちゃん。

 そういった説明は早めにして下さい! 凄く怖かったんですよ!?


 その抗議を受け流しつつお爺ちゃんは短剣を再び布で包むと私に渡してきます。

 え? 持ってけって、黒竜が素材の剣とか高くて買えませんよ!?

 驚いて断ると、一人前になったお祝いだとお爺ちゃん。


 それにここにあっても埃を被るだけだから一緒に冒険させてくれって……。

 ……分かりました。そういう事なら有難く使わせてもらいます。

 でも、いつかちゃんとお代は払いますからね!

 そう言うと苦笑しながら期待せず待ってるよって、そこは普通に期待して下さい!


 武具店を出たら、もう今日は宿へ帰る事にしました。

 けど大変な物を貰ってしまいました……何だか装備ばかりが立派になりますね。

 思わず溜め息を吐くと気持ちを見透かしたように、期待に応えられるように頑張ろうねって、ノアさんが微笑んできます。

 

 ……そうですね! 私自身も強くなります!


 

 今日の収支

 銀貨: -1枚(宿泊費×2)(寝床◎、食事◎)

 ――――――――

 残金:銀貨33枚、銅貨95枚

    猫銀銭30枚


 (ノ_-;)ハア でも、強くなれるか凄く不安です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る