76日目:ノアさんは唐突に!!
神聖歴六一〇二年・
うぅ……昨日から兄が一段と面倒臭くなりました。
具体的に言えば今まで以上にベタベタしてきます……暑いから離れて下さい!!
少しでも気を許した私が馬鹿でした……やはり変態は変態なのです!!
……その変態と今日も雨の中、指輪の光を頼りに急な山道を登っています。
指輪の光も大分強くなったのでそろそろ合流できると思うんですけど……。
そんな事を考えながら歩いているといきなり兄が腕を掴み抱き締めてきます。
もうっ!! 本当にいい加減にして下さいよ!?
流石に文句を言おうとした瞬間、前方の何かを勢いよく蹴り付ける兄。
その直後、辺りに響く獣の咆哮。
驚いて兄の視線の先へ目を向ければ、そこには此方を睨みつける一匹の猿が……。
でも普通の猿じゃありません……全身が岩で覆われているんです。
例えるなら猿型のゴーレム? 岩鎧を着た猿? そんな感じです。
……こんな猿は見た事がありません。
世の中にはまだまだ私が知らない魔物が沢山いるみたいです。
暫く睨み合っていると岩猿が先に動きます。
って、坂道を転がってきた!?
体を丸めて坂を転がり落ちるそれはまさに落石です。
当たれば無事では済まない勢いで向かって来るそれを、しかし兄は私を抱いたまま最低限の動きで躱します。
憐れ坂の下へ転がって行く岩猿……えっと、これで終わりですか?
予想外の結果に呆然としていると兄は何事もなかったように歩き始めます。
……ちょっ!? 待って下さい、放置で良いんですかアレ!?
その背を追い掛けながら訊く私に、問題ないと兄……。
……何でしょう、物凄くモヤっとします!!
その後は大した出来事もなく順調に山道を進み、気が付けば夕暮れです。
はぁ、今日もまたノアさんと出会えませんでしたね……。
ため息を吐きながら野宿の準備をしていると、右手の指輪が一際強く輝き唐突に光を失います……。
え!? 如何したんですか!? もしかしてノアさんの身に何かあった!?
思わず指輪に向かって、ノアさん! ノアさん!! と呼び掛けてしまいます。
すると突然背後から、呼びました? と優しい声が聞こえました……。
……え? 振り返るとそこには……ノアさん? ノアさん!!
髪やメイド服は泥で汚れてボロボロだけど確かにノアさんです!!
そんな姿で、やっと追い付いた、とニッコリと笑うノアさん……。
駆け寄って抱き締めると、優しく頭を撫でてくれます。
良かった、本当に無事でよかった。
二人で喜んでいると、便乗してこようとしてくる兄!!
邪魔なのです!! 来ないでください!!
その夜は疲れ果てているはずなのにノアさんが夕食を作ってくれました。
無理しなくていいと言うのに大丈夫だと料理をする彼女。
ノアさんは本当に凄いですね……。
そうやって出来上がった晩御飯はいつも以上に美味しくて、少し泣いてしまいました……本当、皆無事に会えて良かったです……。
ふふっ、これで兄と二人っきりの帰還作戦も終わりです。
明日からはきっと楽しくなるのです!!
今日の収支
特になし
――――――――
残金:銀貨59枚、銅貨45枚
猫銀銭30枚
(*´∇`*) やっとノアさんと会えたのです♪
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