74日目:ノアさんの指輪。
神聖歴六一〇二年・
昨日までの雨が嘘のように今日は一転して快晴です。
……これだから今の時期の天気は信用できません。
……下山が裏目に出てしまいました。
そんな事を考えていると兄の動く気配が! 気が付きましたか!?
慌てて近寄ると顔を顰めながら上体を起こす兄……無理しないで下さいよ!?
兄は起き上がり私の様子を確認すると、安心した様に小さな溜め息を漏らします。
私は大丈夫ですから、今は自分の心配をして下さい! 無茶しすぎです!!
ちょっと怒った様にそう言うと苦笑しながら兄は再び横になります。
……とりあえず食事の準備をしましょうか……何か食べないと体に悪いですし。
今日の朝食は焼き携帯食料をパンに挟んだヤツです……。
ノアさんがいないから仕方ないじゃないですか! 精一杯頑張ったんですよ!?
若干引き気味の兄でしたが、食べてみると意外と好みの味だったようです。
ふふん。菓子パンみたいで割と美味しいんですよ、これ。
それに兄が実は甘いもの好きという事は把握済みなのです!
食事を終えたら兄に怪我が無いかもう一度確かめます。
昨日見た感じだと命に関わるものはなかった筈ですけど……。
幸い大事に至るものはありませんでした……一安心です。
ただ、左腕がどうも骨折している感じです……これは暫く使えませんね。
とりあえず応急処置として添え木で腕を固定し布で首から吊るしておきます。
その後は兄に状況を説明し今後の方針を話し合いました。
問題は動かずに救援を待つか、自力で帰還するか……。
ここで救援を待つのは再び雨が降り河が増水した場合かなり危険です。
とは言え地図すらなく移動するのも……。
悩んでいると右手に付けた指輪が淡く明滅しているのに気が付きました。
何でしょう? 今までこんな事はなかったのに……。
兄も気になったようで指輪について尋ねてきます。
えっと、ノアさんに貰った守護の指輪ですよ。彼女も同じ物を持ってます。
その説明で兄は何か分かったのか頷くとここからの移動を提案してきます。
え? でも、進む方向が分かりませんよ??
困惑する私に兄は指輪が道標だと教えてくれます。
なんでもペアの魔道具にはお互いを呼び合う性質があるんだそうです。
だから明滅する光が強くなる方角へ進んで行けばいずれ出会えるはずだと。
その言葉にノアさんの優しさを感じて胸の奥が温かくなります。
兄はそんな私の頭を撫でると、良い仲間だとノアさんの事を褒めてくれました。
そう! そうなんです! ノアさんは最高の仲間なんです!!
私が笑顔でそう言うと、兄も笑い返してくれました。
準備をしたら急いで出発です。
途中、歩くのが辛そうな兄の手を取ると驚いた様子で私を見返してきます。
な、何ですか? 怪我人には優しいんですよ、私!
すると笑いながらお礼を口にする兄……もうっ! 何か変な感じです!!
それよりほら、注意して歩いて下さい! ここ滑りやすいですよ!!
――こうして私と兄の帰還作戦が始まったのでした。
今日の収支
特になし
――――――――
残金:銀貨59枚、銅貨45枚
猫銀銭30枚
('-'*)フフ ノアさん……私、頑張ります!!
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