72日目:ノアさん。

 神聖歴六一〇二年・水蛇みずへびの月第二四日・天気:雨/曇


 朝、目が覚めると横には再び兄の寝顔が……。

 はぁ……顔を洗いに行きましょう。

 テントの外ではノアさんが朝食の準備をしていました。

 あの話以降、微妙に気まずいんですよね……。

 しかし無言で横を通り過ぎたら、ペチッと頭を叩かれました。


 い、意外と痛いです……涙目で振り返ると不機嫌そうなノアさんが……。

 ……どうしましょう……何か言った方が……でも何を?

 混乱して沈黙していると、ノアさんは再びペチペチと頭を叩いてきます

 ……ちょっ!? 何なのです!? 痛い! 痛いですってば!!

 

 思わず声を出すと、ノアさんは手を止めてニッコリ笑いました。

 やっと何時もの調子に戻ってくれたと。

 その一言でハッとなります……変に意識して壁を作っていたのは私の方ですか?

 ……ノアさんは元から私が何処の誰でも気にしてない?

 だから私が断言した時、それ以上何も訊いてこなかったんですか??

 それなのに私はノアさんと距離が出来たと勝手に思い込んで……。

 

 俯いて考え込んでいると、ノアさんが優しく抱き締めてくれます。

 それだけで何故か彼女が私の全てを認めてくれた気がしました……。

 その事がとても嬉しくて私もノアさんを抱き締め返します。

 ありがとうございます……私、ノアさんが仲間で幸せ者ですね……。

 

 ……でもアレですね! 心の壁を物理的に叩いて壊すとか、流石ノアさんです!

 そんな自慢の仲間は、笑顔で朝食作りに戻って行きました。

 うん、私も顔を洗ってサッパリしましょう!!


 食事を終えたら早速出発です。

 御者は再び兄が担当。もうずっとそれでいい気がします。

 安全運転で急いで下さいね。この天候で微妙に日程が狂ってるんですから。


 お昼過ぎ、やっと山岳地帯に到着しました。

 ここからは徒歩での移動になります。

 さっ! ノアさん一緒に行きましょう!!

 その手を取り歩き出す私に、彼女は何処か困った様な笑みを向けてきます。

 あ、便乗してきた兄の手は思いっきり叩き落としてやりました。

 微妙に涙目でしたね……。


 岩が多くて歩き難い山道を進みつつ今回の採取目的である岩露草いわつゆくさを探します。

 割と見付けに難いんですよね……自生場所も漠然としていますし……。

 そうしていると段々と陽が傾き始め辺りが暗くなってきました。

 ……そろそろ野営場所を確保しないとですね。


 出来るだけ岩場から離れた平らな土地を探しテントを張ります。

 今の時期、長雨で地盤が緩んでますからね。

 寝てる間に土砂災害に遭うとか普通にあり得ます。

 野宿するのも一苦労です。


 今日の夕食は私も作るのを手伝いました。

 ノアさんに色々教えてもらいながら頑張って調理します。

 ふふふっ。なんだかノアさんがお姉ちゃんみたいです。


 ふと気が付くと兄が私達を複雑な表情で見詰めていました……。

 そして食事を終えるとそのまま休んでしまいます。

 ……何時もならもっと騒がしいんですけど……どうしたんでしょう?

 

 ……このまま何事もなく終わるといいですね依頼。


 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:銀貨59枚、銅貨45枚

    猫銀銭30枚

 

 ☆(*^o^)乂(^-^*)☆  ノアさんとまた仲良くなれたのです!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る