68日目:南瓜頭!!

 神聖歴六一〇二年・水蛇みずへびの月第二〇日・天気:雨


 ……昨日の夜から雨の中、件の沼を監視中……寒いです。

 野営地は沼から大分離れています。

 沼全体を把握できるという理由もありますが、正直あまり近寄りたくないんです。


 だってあの沼……かなり不気味なんですよ。

 森の中だというのにその周囲だけ草木は枯れ果て、所々に動物の骨が散乱していますし。水も酷く澱んでいて、水面が時々ボコッ、ボコッと泡立ったり……。

 少しでも離れたいと思うのは当然でしょう。


 ……雨酷いですねぇ。というか夜になると雷も鳴り始めました。

 ……こんな天気でも出るんですかね火の玉。

 雨に濡れて知らない間に消えてたりして……。

 そんな他愛もない事を考えていると轟く雷鳴。


 ……ッ!! ビックリして思わず頭を抱えて蹲ってしまいました。

 あ! ノアさん何笑ってるんですか!? べ、別に怖い訳ではないのです!!

 少し驚いただけです! それより確り沼の観察を続けて下さいって……あれ?


 再び視線を戻した沼の畔に人影が……さっきまではいなかった筈ですけど……。

 辺りに火の玉の様なものは見えませんね……旅人ですか……? 

 ノアさんに周辺の警戒を頼み人影に近付いてみます。

 真っ黒な雨合羽を着た人物……。 

 フードを深々と被っているので性別は分かりません。


 とりあえず声を掛けてみますが無反応。

 訝しんでいるとまた雷が!! それと同時に消える目の前の雨合羽!!

 一瞬の出来事に混乱していると突然、背中に殴られた様な衝撃が!!


 咄嗟の事で対処できず無様に転倒していまします。

 咳き込みながら背後へ視線を向けると、いつの間にか後ろにいる雨合羽の人物。

 雷が再び鳴り響く中、振り上げられた右手には赤黒く錆ついた鉈が!!

 そして、同時にフードで隠れた顔もハッキリと確認できました。

 三角形の眼窩に人を小馬鹿にした様な三日月形の口……それらから零れる蒼い炎……南瓜頭のこの魔物は――


 ――ジャック・オー・ランタン!!


 それに気が付いた瞬間、ケタケタと笑いながら右手の鉈を振り下ろす南瓜頭!!

 あ、これは避けれないと思ったその時、右手に嵌めていた指輪が輝き目の前に現れる光の盾!!

 その盾に弾かれる鉈……これ守護の指輪だったんですね。ノアさん感謝です!!

 一瞬出来た隙を突いて急いでその場から逃げだします。


 アレは無理です……。 

 ジャック・オー・ランタン。あのコミカルな見た目に騙されてはいけません。

 その正体は生前に悪魔をも騙し死後も彷徨続ける強力な悪霊です。

 悪魔と契約する力、それを巧みに欺き逃げ果せる狡猾さ……。

 並の魔物ではないのです。


 野営地に戻るとノアさんも撤退に賛成でした。

 聖水一瓶ではとても無理だと。

 ですよね……元は調査依頼でしたし……帰りましょう!!

 

 最後にもう一度沼を確認すると、フワフワと浮かぶ南瓜頭が五つ……増えてる!?

 あ、これ絶対無理……撤収~撤収~です!!

 

 街に着いたのは明け方……ギルドへは少し寝てから報告しに行きましょう。


 今日の収支

 銅貨:-28枚(宿泊料×2)(寝床〇、食事〇)

 ――――――――

 残金:銀貨58枚、銅貨15枚

    猫銀銭30枚

 

(;-_-) =3 フゥ 流石にアレは無茶です。

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