66日目:金貨とケット・シー
神聖歴六一〇二年・
ふふっ。朝から宿の自室で金貨を見詰めながらニンマリ。
だって金貨ですよ!? 金貨! 報酬で初の金貨!! ザ・ゴールデン!!
この重さ、この輝き、この美しさ……はぁ、溜め息が漏れてしまいます。
なんて事をやっていると、いつの間にか見ていたノアさんにドン引かれました。
……そ、そんな憐れむような目を向けないで下さい!
その後、気まずい雰囲気のまま朝食を終えて冒険者ギルドへ。
あ、ノアさんは買い物に行くらしいので今日はお休みです。
……お金を革袋ごと預けましたけど……無駄遣いしてませんよね?
そんな心配をしつつギルドに到着。
まずは昨日の結果を受付のお姉さんに尋ねます。
すると問題ありませんでしたよ、とニッコリ笑うお姉さん。
ほっと胸を撫で下ろしますが、差し出された報酬に目が点になります。
……何ですかコレ?
お姉さんから渡されたのは、猫の顔を模した銀色の金属片三〇枚。
……えっと、報酬の銀貨三〇枚は何処へ?
困惑としていると、
いえ、知ってますよ一応。
猫銭は亜人種のケット・シー達が主に使う貨幣です。
ただ、その価値は一般的に使用されている共通通貨の一〇〇分の一程。
因みにケット・シーは直立二足歩行の喋る猫です。モフモフで可愛いです。
でも、なんで猫銭が報酬に……あ、もしかして!?
私は慌てて昨日の依頼書を兎リュックから取り出します。
内容を確認すると依頼主はケット・シー族。
報酬、報酬は……あぁあ!?
やっぱりです……銀貨三〇枚の横にとてもとても小さな文字で猫銭の表記が!!
だ、騙されたのです! というか気付きませんよコレ!?
私の様子から全てを察したお姉さんは気の毒そうな視線を此方に向けてきます。
……こんなミスをするなんて最近少し気が緩んでいたのかもしれません。
ぐすっ……高い授業料だったと思って今回は諦めます……でも泣きたいです。
もう依頼を受ける気分じゃないので仕事はお休みしましょう……。
そう決めて宿へ向かっていると突然、背後から誰かに抱きつかれます。
思わず小さな悲鳴を漏らして振り向くと、そこにいたのはノアさんでした。
……驚かせないで下さいよ……あ、お買い物はもういいんですか?
何を買ったかは……秘密ですよねぇ……もう、ノアさんはいつもそうですね。
革袋を受け取り、そんな会話をしながら一緒に宿へ帰ります。
こんな日は寝て過ごすに限るのです。
宿のベッドの上でゴロゴロしながら革袋の中を覗き込みます。
金貨、金貨を見て和むんです。荒んだ心も金貨さえ眺めれば……って、あれ??
――金貨がない!?
ハッ! ノアさん!!
慌てて部屋へ確認に向かうと、使ったと一言。
私はその場に膝から崩れ落ちてしまいます。
金貨……金貨がぁ……今日は厄日なのです。
部屋へ帰るとベッドで丸くなりシクシクと泣き続けました……悲しいです。
今日の収支
銅貨:-28枚(宿泊料×2)(寝床〇、食事〇)
銀貨:-80枚(用途不明)
猫銀銭:+30枚(依頼報酬)
――――――――
残金:銀貨64枚、銅貨43枚
猫銀銭30枚
。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。 ウワァーン!! ノアさんのバカァ~。
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