62日目:そっと手を繋いで。
神聖歴六一〇二年・
ゴーレムのいた大空洞を突破し、本日は第四階層を探索中。
ノアさん達と分断されて4日目。救出に動いているならそろそろ出会う頃です。
……行き違いにならないよう慎重に進みましょう。
そんな事を考えながら歩いていると休憩に良さそうな空洞を発見しました。
広さもありますしここで一旦休みましょうか……。
そう思い足を止めた瞬間、突然下から突き上げる様な揺れに襲われます。
なんですか……地震!?
酷い揺れに翻弄され焦っているとその原因が地面から姿を現します。
それは白銀のゴーレム……。
!? 下層から追って来た!? でもどうやって!? というか無傷!?
予想外の事態に混乱し動けずにいるとライ君の叫び声が耳に届きます。
ハッとした瞬間、眼前に迫る巨大な拳。
咄嗟にライ君を突き飛ばし、間一髪で避けますが土煙を大量に吸ってしまいます。
涙目で咳をして動けずにいると体に横殴りの衝撃。
……一瞬意識が途絶えます。
気が付いた時には体全体がギリギリと圧迫されていました。
……く、苦しいです……息が……。
見れば私の体をゴーレムの右手がガッチリと掴んでいます。
徐々に増していく握力……このままだと握り潰されて……。
朦朧とする意識で他人事のように考えていると、足元から小さな金属音が。
視線を向ければライ君が自身の短剣でゴーレムを必死に斬り付けています。
……何をやってるんですか! 早く逃げなさい!!
掠れる声で叫びますが、彼は首を横に振ります。
嫌だ、助けるんだと恐怖に耐え涙ながら剣を振るライ君……。
そんな彼へ無情にも左拳を振り降ろすゴーレム。
私は目を閉じて顔を背けてしまいました……ライ君。
……けれど聞えてきたのは絶望的な破壊音ではなく、金属が軋む音。
恐る恐る確認すると何故かゴーレムが動けずに固まっています……一体何が。
すると誰かが私を呼ぶ声が聞こえました。これは……ノアさん?
声のする方を見れば疲れ果てているのに、何処か安心した様子の3人組が。
ふふっ、皆ボロボロです……でも、助かったのかもしれません……。
――そう思った瞬間、私はそっと意識を手放してしまいました。
次に目が覚めた時、周囲はどういう訳かお祭り騒ぎの真っ只中です。
起き上がり辺りを見渡すと沢山の鉱山灯を設置し、コボルド達が盛大な宴会を開いていました。
ノアさんやセバスさん、ゲインさんもそれに加わっています……これは夢ですか?
呆然としつつ隣に目を向けるとライ君が静かな寝息を立てていました。
その無防備な寝顔が可愛らしくて思わず彼の頭を撫でてしまいます。
くすぐったそうに体を捩るライ君……。
ふふっ、頑張りましたね、格好良かったですよ……。
暫くそうしていると私も段々と眠くなってきました。
再び横になるとライ君がそっと手を繋いできます……。
まぁ、今日までは甘えさせてあげます。
それでは、おやすみなさい。
――こうして私とライ君の廃鉱脱出作戦は終わり(?)を迎えたのでした。
今日の収支
(特になし)
――――――――
残金:銀貨47枚、銅貨71枚
未換金物:各種鉱石、マナ結晶(小)×1(破損)
(_ _;)…パタリ やっと……休めるのです。
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