61日目:小麦粉は万能です!!
神聖歴六一〇二年・
……昨日の戦闘以降ライ君の様子が変です。
具体的には私の手を離してくれません……休憩している間もずっとです。
あと、たまに視線が合うとすぐに顔を逸らされます……。
けど文句や弱音は吐かないんですよね……大丈夫ですか? 無理してませんか?
さて、そんな感じで次の第五階層を探索中、大問題が発生しました……。
この階層の避けては通れない大空洞……なんとそこにはゴーレムが!!
ゴーレムは石や金属を材料に作られた魔術人形です。大きさや形は様々。
目の前のそれは人型で体長は八メートル程。材質は白銀に輝く金属です。
彼らに共通する性質はある領域内に入った主人以外のモノを攻撃する事。
……ダンジョン内の魔物が作るはずは無いので恐らく設置したのは冒険者の類。
ゴーレムを動く壁として利用する話は度々聞いた事があります。
……なんて迷惑な! 使用後は確り破棄するか回収して下さい!!
でも、どうしましょうか。
流石に八メートルもあるゴーレムの相手は今の私には無理です……。
エルさんなら容易に斬り伏せそうですけどね……。
悩んでいると、ライ君が苦しそうに咳き込みます。
あぁ、ゴーレムが巻き上げた土煙を吸ったんですね。
……ほら、お水です。あとこの布を口に当てるといいですよ。
土煙……あ、閃きました!!
私は兎リュックからある物が詰まった麻袋を取り出します。その数、一〇袋。
携帯食料と一緒に毎回買い足していたんですけど……意外に沢山ありますね。
今度中を整理しないと……。
袋の山を不思議そうに見詰めるライ君。ふふふっ、この後驚きますよ?
大空洞の入口から二人でゴーレム目掛けて麻袋を投擲します。
ヤツが空洞の外に出ないのは調査済みです!!
攻撃と勘違いし麻袋を殴るゴーレム。袋が破け飛散する中身は小麦粉です!!
段々と白い煙がゴーレムを覆っていきます。そろそろ仕上げですね。
最後に鉱山灯の安全装置を外しゴーレムへ投げつけ、急いでライ君と入口から離れた岩陰に隠れます。
その直後響き渡る爆音、大きく揺れる坑内。ライ君をそれらから必死に庇います。
暫くして全てが収まると二人で慎重にゴーレムの様子を確認しに行きました。
予備の鉱山灯を使い大空洞を覗くと、ゴーレムは大量の土砂の下敷きに!!
やった! やりましたよ!! 本の真似でしたけど大成功です!!
ライ君が魔術か!? と驚いていますが、そんな大した物ではありません。
これは錬金術の領分……単なる粉塵爆発です。
鉱山等で事故が起こった時、よく問題になるアレです。
今回は小麦粉を利用してそれを意図的に起こしたに過ぎません。
でも、まさかここまで威力があるとは……小麦粉って凄い!!
食べてよし、爆発させてよしの万能食材です! また大量に買っておきましょう!
さぁ、ライ君。アレが埋まっている今の内にここを抜けますよ! 駆け足です!
――そうして二人手を握り合って走りだします。地上までもう少しです。
今日の収支
(特になし)
――――――――
残金:銀貨47枚、銅貨71枚
未換金物:各種鉱石、マナ結晶(小)×1(破損)
('-'*)フフ 帰ったら小麦粉を買い占めるのです。
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