60日目:カランと妙な音がする

 神聖歴六一〇二年・水蛇みずへびの月第一二日・天気:不明


 廃鉱内に進入して今日で四日目。段々と疲労が溜まってきました。

 ライ君も疲れているのが一目で分かります……もう少し頑張ってくださいね。

 この状況を本当によく耐えてくれています。

 普通ならとうに泣き叫んでいても不思議ではありません。

 だからこそ、そんなライ君の為にも絶対無事に脱出するんです!!


 重い足取りのライ君を気遣いながら地図を確認します。

 記号の意味は大体分かりました。

 ですが結論は、印がある場所は避けた方が無難という事です。

 あの後も数個調べましたが確認するリスクが高過ぎます。

 それなら元から近付かない方が遥かに安全です。


 そういう訳で印のない道を進んでいますが、最短経路の何倍もの距離を歩く事になりました。

 私やライ君の疲労が増しているのもそれが一因だったりします。

 あとは単純に休息が難しいのもありますね……ライ君は短時間でも寝せてますけど、私は殆ど眠れていません。

 流石に見張り役を彼に任せるとか無理ですからね……あぁ、頭がぼーっとします。


 欠伸を噛み殺して再び歩き出します。

 もう暫く進めば第五階層へ続く階段が見えてくる筈です。

 ……コボルドに会いたいです……彼らに道案内を頼めれば色々楽なんですけど。


 そんな事を思っていると通路の角で何か影が動きました……まさか、コボルド?

 一応ライ君を背に庇いながら、仄かな明りを頼りに目を凝らします。

 カラン、カランと妙な音を響かせながら現れたのは、槍を持った人の骸骨――

 

 ――ってスケルトンじゃないですか!?


 その異様な姿に背後のライ君が身を竦ませるのが分かります。

 スケルトンは大体が武装した骸骨でその姿通り元は人間です。

 マナが濃いダンジョン等で遺体を放置した場合、ゾンビ化しその後骨になってスケルトン化します……要するに探索に失敗した冒険者の成れの果てです。

 噂には聞いてましたけど、実際に目にすると中々に強烈ですね。

 その恨めしそうな仄暗い眼窩は嫌でも恐怖心を煽ります。


 ……逃げたいですけど戦わないと先に進めません。

 左右に剣を構え臨戦態勢へ……ライ君は岩陰に隠れていて下さい。

 スケルトンとの戦闘には聖水が必要という話でしたけど……さてさて。

 その場で出方を窺っていると、槍を構えて突進してきます。

 ですよね! 狭い通路にリーチの長い槍、そう来ると思いました!!

 

 左に躱して相手の勢いも利用しすれ違いざまに右足と右腕を斬り付けますが――

 鉄を叩いた様な手応えと共に弾かれます……硬い……けど骨には罅が入ってる!!


 短剣を仕舞い小剣を両手で構え、向き直ったスケルトンを槍ごと袈裟斬りに――

 両手が痺れる様な衝撃。しかし、全体重を乗せた一撃は見事相手を両断します。

 同時に心臓部のマナ結晶も砕け散り、カラカラと音を立てて崩れるスケルトン。


 ……やれば出来るものですね。さぁ、ライ君、先を急ぎますよ。


 ――此方をじっと見詰めて動かない彼の手を引き、私は再び歩き始めるのでした。


 今日の収支

 (マナ結晶(小)×1(破損))

 ――――――――

 残金:銀貨47枚、銅貨71枚

 未換金物:各種鉱石

 

ε=( ̄。 ̄;)フゥ ……まだまだ先は長いです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る