59日目:廃鉱脱出作戦

 神聖歴六一〇二年・水蛇みずへびの月第一一日・天気:不明


 気が付くと地面に仰向けで倒れていまいした。

 ……生きて……ますねぇ。


 とりあえず周辺状況の確認です。

 立ち上がるとカランッと爪先に何かが当たります。

 あ、鉱山灯です! 手に取り調べますが何処も壊れてなさそうです、良かった。

 用心して火を灯すと仄かな明りが周囲を照らします。

 その瞬間、岩陰で何かが動きました。

 剣に手を掛けながら光を向けると、頭を抱えて蹲るライ君の姿が……。


 近付き声を掛けると突然抱き付かれました。

 凄く震えてます……怪我とか大丈夫ですよね?

 そのままの状態で確認しますが目立った外傷はないようでした。

 私はそっと胸を撫で下ろします。出血等による震えじゃなくて助かりました。


 ……ライ君が離してくれません……何時もの強気は何処へ消えましたか?

 まぁ、子供ですから仕方ありませんね。

 かく言う私も今までの経験がなければ相当焦っています……あと年下のライ君がいるのも冷静な理由でしょう。

 ……頭でも撫でてあげましょうか? 少し落ち着くかもしれません。


 撫で続けているといつの間にか震えが止まっていました。

 下を向くとライ君が不安そうに此方を見上げています。

 そんな彼に微笑むとバッと顔を背けられ、慌てて私から離れてしまいました。

 ……可愛くないです。

 元気そうなので状況を説明しましょう。現状を早く理解してもらわないと先に進めませんからね。


 話し終えると今にも泣き出しそうな顔になるライ君……気持ちは分かります。

 落ちてきた縦穴を見上げると相当深いですからね、ここ。

 二人とも掠り傷程度なのは奇跡的です……神様に感謝……はしません。

 ……いるなら落とさないで下さい。

  

 とりあえずここから移動します。二次崩落の危険性もありますし。

 歩き出すと慌ててついて来るライ君。うん……まだ大丈夫ですね。

 そんな彼に鉱山灯を預けます。役割があると不安が紛れますからね……。

 あと有害なガスには地面付近に沈んでいる種類もあります。

 だから背の低いライ君が持つ方が好都合なんですよ。

 ……火に変化があったら急いで教えてくださいね?


 進む事にしましたが……ここは何処でしょう? 地図は……ノアさんか。

 ……あ、コボルドの地図! 急いで兎リュックから取り出し確認します。

 これ……一〇〇年も前の坑内地図です! 相当古いですけど無いよりマシです。

 落ちる前の場所や坑道番号を調べて如何にか現在位置を把握します。

 ……第六階層とか泣けますね。

 うん? この妙な手書きの記号はなんでしょう?

 ……何か分かりませんが▼の印がある方へ慎重に進んでみましょうか。

 

 暫く歩いて印の地点に近付くとふっと灯りが消えました……ふむ。

 引き返し、別の▼印を目指してみます。するとまた同様に火が消えました。

 なるほどこの印の意味は分かりました。これは他の記号にも何かありますね。

 ……印には用心して移動しましょう。


 厳しい状況ですが諦めずに頑張ります。

 ライ君、無事に地上へ帰りますよ!!


 ――こうして二人きりの廃鉱脱出作戦が始まりました。


 今日の収支

 (特になし)

 ――――――――

 残金:銀貨47枚、銅貨71枚


 (p_;)\(^^ ) 絶対大丈夫です!!

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