58日目:コボルドコール
神聖歴六一〇二年・
あぁ、よく眠りました。ダンジョンで確り寝たのは何気に初ですね。
周囲を見渡すとライ君とセバスさんはげっそりと疲れ果てた様子です。
ゲインさんは無言で此方を見詰めて……うん、普段通り顔が怖い。
ノアさんはコボルド達にチーズを配ってくれています。
その表情は何処か楽しげで疲れは心配なさそうです。
今回の野宿は幸運でした。
現在、なんと私達はコボルド達の住処にお邪魔しています。
昨晩は彼らが周囲を警戒してくれたお陰でゆっくり休む事が出来ました。
何でこういう状況になったかというと昨日、採掘ポイントで作業をしていると再びコボルド達に出会ったんです。
それでチーズを与えると何故か彼らの住居へ案内してくれました……。
まぁ、当初ここに泊まるのはライ君達が非常に難色を示したんですけどね。
ならばと暫く外に放置したら無理だと悟ったらしく後は大人しくなりました。
当り前です。外は昼夜問わず魔物が徘徊するダンジョンなんですから。
……こんな警備付きの安全な場所なんて滅多にありません。
さてと、ノアさんがお礼のチーズを配り終えたので出発しましょう。
住処を出るとコボルド達が名残惜しそうに手を振って見送ってくれました。
次回はもっと大量にチーズを持って来ますからね!!
……うん? 眠そうですねライ君。だからちゃんと寝なさいって言ったのに。
足元の覚束ないライ君を気にしながら採掘現場に戻ってきました。
今日こそミスリル銀を掘り当てます! 昨日は発見できなかったんです。
コボルドにチーズをあげても流石に教えてくれませんし……いえ、教えてくれるんですが全て
毎回何が違うのか分からないらしく、私が落胆する様子をキョトンとした表情で見上げていました……可愛いです!!
因みにミスリル銀は銀や妖銀と見た目では区別が出来ませんが、マナを利用すれば簡単に判別できます。
ノアさんがいてくれて助かりました。私を含め残りはマナ適正が皆無ですからね……マナを殆ど使えません。
調べ方は単純なんですけどね……体内のマナを鉱石へ抵抗なく通せるか試すだけですから……私も魔術が使えたらなぁ。
そんな感じで今日も掘りだしてはノアさんに鑑定してもらう作業の繰り返しです。
……ハズレばかりで段々飽きてきますね……あ、ライ君が寝てる。
そのだらしない寝顔に呆れていると突然――
――コーン、コーン
と何かを叩く音が坑内に響きます。コボルドコール!?
鉱山で災害が起こる際に鳴るというアレですか!?
あ、少し離れた坑道にいるコボルド達が焦った様子で私達を呼んでます!
そっちが安全地帯ですね! 退避! 全員退避です!!
急いで駆け出しますが、途中でライ君が転んでしまいます……もうっ!
慌てて引き返し助け起こした瞬間、足元の地面が崩れ落ちて……。
周囲の様子がゆっくり流れて行きます……悲鳴はノアさん? セバスさん?
しかし私とライ君は崩落に巻き込まれ、地下の闇へと消えるのでした……。
今日の収支
(妖銀等の各種鉱石)
――――――――
残金:銀貨47枚、銅貨71枚
( ▽|||)サー あ、これ死んだかも……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます