57日目:廃鉱探索開始です。

 神聖歴六一〇二年・水蛇みずへびの月第九日・天気:晴


 ……昨日の野宿は色々疲れました。

 食事や寝床で文句を言い過ぎです……コレだからお坊ちゃんは。

 あの程度を我慢できないなら冒険者には向いてないと思います。


 お昼過ぎにようやくルファルド廃鉱ダンジョンに到着しました。

 道具を整え早速進入開始です。

 隊列は私とノアさんが先頭、次にセバスさん、ライ君、殿がゲインさん。

 廃鉱の中はかなり暗いです。

 以前行ったコボ鉱山は光源が確保されていましたが、ここはダンジョンなのでそういった設備が殆どありません。

 仮に設置しても魔物にすぐ壊されてしまうそうです。


 そういう訳なので事前に鉱山灯を購入してきました。

 その名の通り鉱山など火気が危険な場所でも使用出来る特殊なランプです。

 これなら可燃性のガスにも火が燃え移りません。加えて有毒ガスの検知もできる優れものです。明るさに若干問題がありますけど安全第一です。

 因みにマナを用いる同様の魔道具もありますが……物凄く高価なんですよアレ……一台金貨一枚とかぼったくりです。


 心許ない灯りを頼りにノアさんと地図で経路を確認しながら慎重に進みます。

 その遅さにライ君が騒ぎますが無視です、無視。

 えっと、採掘場所はもう少し先ですか……今回の依頼はミスリル銀の納品です。

 ただ限られた鉱山でしか採れない貴重な金属なので少し不安です……。


 暫く歩いていると不意にノアさんが立ち止ります。

 此方に向かってくる足音が複数あるようです。

 灯りを前方へ向けて目を凝らすと小さな人影が三つ……あぁ、コボルドですか。

 って、ライ君!? 何で短剣を抜いて駆け出すんです!?

 慌てて手を伸ばして捕まえます……何をしてますか君は。

 ……コボルドは鉱山での良き隣人ですよ!?


 注意してもライ君は剣を構えてコボルドを睨み続けます。

 それにコボルドも警戒心を強めツルハシ等をガチャガチャ鳴らす始末。

 ちょっ!? コボルドと敵対したら廃鉱探索どころではなくなります!!

 あ! そうだ、チーズ、チーズで機嫌を取りましょう。

 

 暴れるライ君をノアさんに預け、兎リュックから急いでチーズを取り出します。

 最初は唸っていた彼らですが、私が手にした物を見ると尻尾を振りながら駆け寄ってきました……うん、完全に犬ですねコレ。

 チーズを渡すと満足そうにするコボルド達。

 何とか許してもらえたようです……危なかった。

 

 その場でチーズを食べ終えるとコボルド達は手を振りながら帰って行きます。

 そうそう去り際にお礼なのか古い地図をくれました……とりあえず貴重そうなので兎リュックに大切に仕舞っておきます。


 では先へ進みましょうか。

 うん? ライ君が少し大人しくなってる……ノアさん何かしましたか?

 まぁ、静かだからいいですけど。


 あ、今の内に言っておきましょう。今日は坑内で野宿ですからね。

 その言葉に顔を引き攣らせるライ君……ふふふっ、これがダンジョン探索の現実です。今更後悔しても遅いですよ。

 

 さて、採掘ポイントまであと少し……もうひと頑張りです!!


 今日の収支

 古い地図×1

 ――――――――

 残金:銀貨47枚、銅貨71枚


 (・_・?) 謎の地図……!! 埋蔵金ですか!? まさかね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る