55日目:少年と老人
神聖歴六一〇二年・
二日も続けて高級宿に泊まってしまいました……贅沢は敵なのに。
これも全てあんな張り紙をした兄のせいです!! 許すまじ兄!!
……思い詰めてもアレなのでお仕事に行きましょう。
嫌な事は働いて忘れるのです!!
ギルドに入ると中は気まずい空気に包まれていました。
原因は受付にいる小さな少年と燕尾服のお爺さん。
少年が駄々を捏ね、お爺さんと受付のお姉さんでそれを宥めているようです。
……うん。とりあえず関わらない方向で!!
背後をそっと素通りしてクエストボードの前へ。
今日はそうですねぇ……ルファルド廃鉱ダンジョンにでも行ってみましょうか。
鉱石は意外と高く売れますし、丁度いい感じの採取依頼があります。
普通なら鉱石の運搬とか大変なので遠慮しますけどノアさんがいれば楽勝です!!
二人で依頼を受付に持って行くと……まだいます、少年と老人。
お姉さんもほとほと困り果てた様子です。
空いてる受付は……彼らの両隣だけですか……他は全て埋まっています。
……皆さん関わるのを避けてますね!?
何処に並ぶか迷っていると、棒立ちなのが目立ったのか突然少年が私を指差して大声で喚きます。
どうしてあんな子供が出来て自分はダメなのだ! 的な事を……頭痛いです。
しかも無視しているとこっちに向かってきます……来ないで下さいよ!?
……捕まってしまいました。
そして私、ノアさん、お姉さん、お爺さんで少年を説得中です。
この少年、どうやらダンジョン探索へ行きたいようですが規則上それは無理です。
しかし何度説明しても聞分けません。
自分は強い! 私より実力がある!! とか言い続けるんですよ……なんで私と自分を比べるんです?
お爺さんに小声で尋ねると、なんでも先日私達が地下水路から脱出するのを見ていたそうです。
だから、あんなのが出来るなら自分でもやれる! と思っているらしいと……あんなの……喧嘩売られてますか私?
暫くすると何故か私だけギルドマスターに呼び出されます……どうしてです!?
執務室へ入るとギルドマスターにいきなり頭を下げられました。
あの少年をどうしてもダンジョンへ連れて行って欲しいと。
ランクの問題はお爺さんが現役復帰すれば解決するようです……つまり彼とノアさんはCランク以上ですか。
ここまでする訳を聞くと有力貴族の息子だから断り難いと……冒険者ギルドが屈する程の権力とかぞっとするんですけど!?
そんなの絶対無理です! 貴族なら余計にお断りです!!
しかし立ち去ろうとすると紙を一枚渡されます。それは例の張り紙で……。
顔を引き攣らせる私に、これお前さんだろう? と腹黒い笑みを向けてきます。
……それは卑怯ですよ!?
……結局引き受ける事になりました、出発は明日。
ぐすっ……権力には逆らえなかったのです。
戻るとノアさんには怒られるし……うぅ、これも全て兄のせいです!!
そしてノアさんのご機嫌を取る為に今日もまた高級宿だし……泣きたいです。
今日の収支
銀貨: -1枚(宿泊費×2)(寝床◎、食事◎)
――――――――
残金:銀貨53枚、銅貨8枚
(ノ_-;)ハア…色々辛いです。
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