40日目:新しい旅立ち。

 神聖歴六一〇二年・皋竜こうりゅうの月第二三日・天気:晴


 綺麗な青空……旅立ちには絶好の晴天です。


 というわけでギルドへ挨拶に向かいました。

 受付のお兄さんは微笑みながら道中の無事を願ってくれます。

 色々お世話になりました。


 酒場にいたカールさん、マリナさん、エルさん、マルガさんにも出立を伝えます。

 すると餞別として木箱を一箱くれました。……何でしょうね?

 蓋を開けて中を確認すると入っていたのはモコモコした白いリュックサック。

 ……何故か兎の顔を模しています。肩ベルトは耳ですか? あ、横のポケットは足っぽいです。


 え? いや、可愛らしいですけど、なんでこんな妙なリュックが餞別なんです?

 その考えが思いっきり顔に出ていたのか、堪らずマルガさんが吹き出しました。

 そして笑いながら教えてくれます。それは魔法のリュックなのだと……え!?


 つまりアレですか!? 荷物が見た目以上に沢山入って尚且つ重くならないというあの素敵アイテムですか、これ!?

 で、でもなんでそんな貴重で高価な物を!? 


 詳しく聞くと、例の件でダンジョンを調査中に隠し部屋で発見したそうです。

 けど、それなら私にくれなくてもカールさん達が使えばいいんじゃ?

 そう言うと、便利でもそんなファンシーな物を使いたがる奴がいない、と真顔で返されました……。

 だから死蔵するのもアレなので是非使って欲しいと。


 ……そんなに変なデザインですかね? 可愛いのに。

 しかし、そういう事なら大切に使わせてもらいますね!!

 お礼を言うとこれからも頑張れよ、と皆から頭を撫でられました……くすぐったいです。


 そして、お別れを言って出発しようとすると、エルさんから引き留められます。

 何ですか? 首を傾げると、娘をこれからもよろしく頼む、とお願いされました。

 突然の爆弾発言に周囲が騒然としていると恥かしそうに説明してくれます。


 実はあのメイドさん、人間の旦那さんとエルさんの娘なんだそうです!! 

 え、って事はクォーターエルフですか!?

 一〇〇年程前に家出したきり行方不明だったらしいんですが、私のお陰で出会えたと嬉しそうに語ってくれます。

 その際、今迄の話を聞いたらしく、今後も迷惑をかけるがよろしくと……。

 リュックを貰った手前断り辛いです……狙ったなら策士ですねエルさん!!


 一応了解しましたけど、メイドさん消えちゃったんですよね……。

 そんな事を思って歩いていると、街の門で佇んでいる彼女に出会いました。

 ご一緒してもいいですか? とおずおず尋ねるその横を私は無言で通り過ぎます。

 何処か落胆した様子の溜め息が聞こえました。

 

 ……馬鹿ですね。


 私は振り返ると彼女の名前を呼びました。

 行きますよ、ノアさん!! 今日中に湖へ到着するんですからね!?

 すると薄ら涙を浮かべて嬉しそうに駆け寄ってきます……むぅ、本当に面倒なメイドさんです。

 でも何故かワクワクしますね!!


 仲間が増えて新しい冒険の始まりです! 目指せルーファの街!!


今日の収支

銅貨:+25(賭け金返金)(マリナさんに怒られました。賭けは金輪際しません)

   -50(保存食各種)

――――――――

残金:銀貨4枚、銅貨25枚


  ( ^^)人(^^ ) 家出者二人の冒険が今始まるのです!!

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