38日目:帰還

 神聖歴六一〇二年・皋竜こうりゅうの月第二一日・天気:曇


 昼頃に起きてギルドへ行くと何故かお祭り騒ぎでした……え? 

 なんで皆さんお酒を飲んでるんですか!?

 呆然としていると受付の近くで見知った冒険者を見つけます。


 それは約十四日前ダンジョンで別れた人……。

 気が付けば名前を叫んでいました――マルガさ~ん!!

 此方を見ると微笑みながら手を振る彼女に、私は駆け寄ると思わず抱きついてしまいました。

 マルガさんはそんな私の頭を優しく撫でてくれます……子供扱いは嫌ですけど今だけはとても嬉しいです。

 

 そうしていると一人の男性が近付いて来ました。

 角刈りの黒髪に頬には十字傷、鷹のような鋭い目。

 派手な深紅の鎧と背の両手剣には数々の戦いをくぐり抜けたであろう無数の傷……そんな一目で一流の冒険者と分かる人が目の前で深々と頭を下げてきます。

 それに倣って周囲も私に頭を下げだしました。ってマルガさんまで!?


 動揺しているとひょっこり現れたマリナさんが男性を窘めてくれました。

 それに苦笑しながら頭を上げる男性。周りも何処か気恥ずかしそうです。


 場所を酒場に移して話をするとこの男性がカールさんでした。

 彼に今回の事を改めて謝罪されます。これもコミュニティ長としてのけじめなのでしょう。

 素直に受け入れると安心した様子でした。


 そこにエルさんとメイドさんがやってきます……メイドさん何故か俯いてますけど何かやらかしましたか?

 訝しんでいるとエルさんが布包みを渡してきます……何でしょう?

 中を見て驚きました。ダンジョンに置いて来た鎧と私を襲った魔物の素材です!!

 聞けばカールさん達が回収してくれたそうです。なんて有りがたい!!


 お礼を言うと自分達も儲かったので気にするなという事でした……儲かった?

 不審に思いマルガさんに目を向ければ顔を背けられました。

 その様子に何かを察したカールさんが申し訳なさそうに教えてくれます。

 ダンジョンに突発的な変化があった場合、その正確な地図を製作しいち早くギルドへ提供すると特別報酬が出るそうです。

 その額金貨八〇枚!! 暫く遊んで暮らせる金額です!!

 

 カールさんはてっきりその辺を説明されて私が協力してくれたと思っていたようです……。

 マルガさん笑ってますけど誤魔化されませんよ? 後できっちり説明して貰いますからね!?


 その後、まぁ何はともあれ今日は飲もうという流れになりました。

 酒代はカールさんのコミュニティの奢りだそうです……だから皆この時間から飲んでたんですね。

 ……では遠慮なく! お姉さ~ん、ロマネの一番良いのをボトルで~!!

 周囲がギョッとした様子でこっちを見ていますが気にしません。

 ふふふっ、金貨八〇枚分飲んでやるのです!! 

 カールさん少し涙目ですけどマルガさんが隠れて飲んでるボトルもかなり高いんですよ?

 

 あぁ、でも皆無事に帰って来て良かったです。


今日の収支

壊れた鎧、アントキラ―の各種素材

――――――――

残金:銀貨4枚、銅貨13枚


イッキ!(p゚▽゚)p (*/◎\*))ゴクゴク q(^▽^q)イッキ! 今日は皆でガンガン飲むのです! 飲み尽くせ金貨八〇枚!!

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