37日目:割りますか?

 神聖歴六一〇二年・皋竜こうりゅうの月第二〇日・天気:晴れ


 朝日が目に染みます……お仕事開始です。

 住処は昨日の内に把握済みです。

 眉唾物でしたけどトロールの住処は夜になると財宝で光り輝くという話は本当でした。お陰で簡単に発見できましたよ。

 酒場の噂話も馬鹿に出来ません。


 岩場に荷車を運び入れるのは無理なので近くに停めておいて住処へ向かいます。

 岩の多い道なき道を進むと綺麗に整地された広場のような場所に出ました。ここが住処です。

 その広場の周囲を囲むように大小様々な丸岩が沢山並んでいます。

 財宝は……ありました。隅に堆く積まれています……荷車に載せきれますかね?


 そういえば昼間は石になるという話のトロールが見当たりません。

 あの話が誤りで今襲われたら危険なんですけど……。

 するとメイドさんが周りの丸岩を指差します……なんですか?


 確認してギョッとしました。丸岩と思ったのは全てトロールみたいです!!

 なるほど……こうやって頭を抱えて丸まった状態で石になるんですね……知りませんでした。

 でもこれなら安心ですね急いで財宝を運び出しましょう!!


 ……お、終わらない……多過ぎじゃないですか? というか重過ぎるんですよ!!

 なんでこんなに重いんですか……見た目は小さいのに……。

 メイドさんが比重について説明してくれましたが正直頭に入りませんでした。


 そんな調子でお昼が過ぎ段々と日が傾いて来ました……不味いですねこのペースだと運び終わるのは夜です。

 トロール達が動きだしてしまいます。そうなったら万事休すです……。

 それにしても本当重い……残り何往復でしょう。


 あぁ、空が茜色に……いよいよ最悪の展開ですか。

 そう思っているとメイドさんがいつの間にか巨大なハンマーを肩に担いでいます。

 え? そんな物どこから持って来たんです?

 呆然としているとメイドさんハンマーを丸岩目掛けて振り下ろしました!!

 パカッと真っ二つに割れてしまう丸岩……。言葉を失っているとブイサインをしてくるメイドさん……もう好きにしてください。

 残っている丸岩が一瞬震えた気がしますが……うん、勘違い! きっと勘違いです!! ……大人しく割られてください。


 私がようやく財宝を運び終えて広場を見渡すと二つに割れた丸岩が辺りに散乱していました。

 結局日が完全に落ちる前に全て割ったんですよねメイドさん……憐れトロール。

 恨むならメイドさんを恨んでください。


 その後二人で荷車を押しながら街へ帰ります。

 あれ? メイドさんはハンマーを何処にやったんでしょう?

 今まであったのに……謎です。


 ギルドに着いたのは深夜、日付が変わる頃でした。

 朝から運ぶというのも考えたんですが、財宝を護りながら野宿とか無理なので諦めました。


 眠いです……宿へ帰りましょう。あ、メイドさんもですね、はいはい。

 因みにトロールは石の状態で討伐しても報酬は出ないそうです……残念です。


今日の収支

銅貨:+50枚(任務報酬)

   -26枚(宿泊費×2)(寝床〇、食事〇)

銀貨:+1枚(任務報酬)

――――――――

残金:銀貨4枚、銅貨13枚


(-ω-;)ウーン……メイドさんの道具が気になります。

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