29日目:抜けない……
神聖歴六一〇二年・
今日は雲一つない青空です。少し暑いですね。
さぁ、頑張ってお仕事をやって行きましょう!!
早速ギルドでクエスト選びです。
まぁ、今回は装備の慣らしも兼ねて軽めのモノにしましょう。
この
採取系は慣れっこです。それにゴブリンを狩ると追加報酬が!
ふふふっ、茸を採取した後はゴブリンを狩りまくってボロ儲けです!!
採取場所は街からそんなに離れていない森の中。
四枝茸は森の日当たりの良い所に生えています。
見た目は鳥の足を逆さに突き立てたような感じです。色は燃えるような赤。
そんな感じなので他の毒キノコと間違える事は滅多にありません。簡単なお仕事です。あ、早速見つけました!!
茸類は一本見つければ周辺にまとめて生えているので採集が楽ですね。
もう既に八本も採れました。後二本、これなら暗くなる前に帰れそうです。
そう楽観していると少し遠くの藪で何やら音がしました……これはヤツですかね?
慎重に進み、近くの木の陰にサッと隠れて様子を窺います。
予想通りそこにいたのはゴブリンでした。
ゴブリンは人型の魔物です。身長は六~七歳児程。特徴はその妙に大きなお腹と頭、加えて尖った耳でしょうか。
個々の力はそれ程脅威ではありませんが、集団だと危険度が跳ね上がる魔物です。
そんなのが目の前に一匹。周囲に仲間はいなさそうです。はぐれでしょうか?
……でも微妙に武装しているのが面倒です。革鎧に鉈とかゴブリンのくせに!
けれど、単独行動しているのは珍しいのでここはやりましょう。
今なら気付かれずに背後からサクッといけるはずです!!
そしてタイミングを見計らい襲おうとした瞬間――
――あ、アレ? 抜けない……腰の短剣が抜けない!? え!? 何でですか!?
昨日確認した時はすんなり抜けたんです! 今朝もなんともなかった筈です!
なのに!! なのにどうして抜けないんですか!?
軽いパニックに陥っていると、ゴブリンが此方に近づいて来る足音がします。
あ、ダメです……今この状況で見つかるのはダメです……。
比較的弱いといっても魔物指定されているんです。武器なしでは無理です!!
息を、息を潜めてやり過ごすんです。
――カチッカチカチカチッ
!? 歯! 歯が!!
慌ててポーチの中の布を口に詰め込みます。
……これは……怖がってるんですか、私?
暫くそうしていると、ゴブリンは何処かへ行ってしまいました。
助かりました。溜め息を吐きながら短剣を引くと、意外な程軽い感じで鞘から抜けました。
……なんで、なんで今抜けるんですか!?
それから何度かゴブリンと遭遇しましたが、結果は全て同じでした。
……剣が抜けないんです。
その後、ギルドに帰り報酬を受け取った私は珍しく酒場にいました。
飲まないとやってられなかったのです。今日はとことんです!!
冒険者なのに肝心な時に剣が抜けないなんて!!
……私はどうしてしまったのでしょう?
今日の収支
銅貨:+30枚(任務報酬)
-45枚(酒場代)
――――――――
残金:銅貨86枚
酒もってこい(*'с'*)ノ彡☆ばんばん! まだ、まだ飲めます!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます