24日目:独りぼっちの……

 神聖歴六一〇二年・皋竜こうりゅうの月第七日・天気:不明


 ……眠いです……頭がガンガンします。

 今日でダンジョンに入って三日目です。

 この辛さはアレですね、護衛任務の時を思い出します。

 まぁ、精神的にはあちらの方が遥かにマシですけど。


 さて、水の流れの様子を見る為に第九階層へ引き返したのですが、なかなか見つける事ができません。

 仮に流れ終わっていても、痕跡というのは残っているはずですけど……。

 これはどういう事でしょうね?


 再度緊急会議をおこない達した結論は、あれは雨の影響ではない可能性が高い、というものでした。

 そもそも雨の可能性を疑ったのは、ダンジョン進入時の天気にあります。

 確かに曇でしたが、その後雨が降った確証はありません……。

 では、あの地図上にない水の流れは何なのでしょう?


 エルさんの推測では、迷宮蟻がダンジョンを拡張する際に偶然、地下水脈を掘り当てたのではないか? という事でした。

 地下水脈……この深さならあっても不思議ではありません。あれ? でもダンジョンって広がるんですか?

 疑問に思って聞くと、内部の魔物の種類によっては、少しずつ変化するそうです。その為、数年に一度は地図を更新するんだとか。

 

 しかし、水の原因についてある程度考察を終えたのに、二人は何故か難しい顔のままです。……どうしたんでしょうね? 

 私から離れた場所で二人だけで話し始めましたけど……嫌な予感がします。

 マルガさんの提案を、エルさんが必死に止めている様子ですが……あ、これ絶対、ダメなヤツです。

 

 数分後、マルガさんが真剣な表情で私の方へやって来ます。

 告げられたのは、私一人で地上へ帰還してくれないか? という話しでした……。

 はぁっ!? いやいや、無理でしょう……というか何故ですか!!

 詳しく聞くと、二人は今から再度下層へ進み、変化のあったダンジョンをマッピングしてくるそうです。

 調査ではかなり深部まで潜る事になるので、私を連れてはいけないと……。

 

 待って下さい! なら一度戻って万全の態勢で来た方が良くないですか!?

 そう提案しますが、首を横に振られました。

 時間がないそうです。これは大至急やらなくてはいけないと。

 そのマルガさんの深刻な様子に、言葉を返せなくなります。


 結局、渋々了承する事に……不安です、物凄く不安です。

 

 二人と別れる前に色々手渡されました。

 まずは地上までの最短経路が示された地図。次に携帯食料と各種薬剤。

 あとは手紙が一通。これは酒場にいるカールという男性へ渡すように頼まれます。

 最後は革袋いっぱいの屑マナ結晶。これは今回無理を頼む報酬だそうです。


 えぇ!? でもこれ、回収した分全てありますよ!?

 呆然としていると、それでも報酬としては少ない位だと、エルさん……。


 その後、二人は再度ダンジョン下層への道を進んで行きます。

 ……うぅ、覚悟を決めて私も上を目指しましょう……泣きたいです……。


 こうして独りぼっちのダンジョン脱出作戦が始まりました……生きて帰れますよね、私?


 今日の収支

(屑マナ結晶:個数不明)

――――――――

残金:銅貨49枚


C= C= \(;・_・)/  早ければ明日には外へ出られるのです……頑張れ、私!!


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