22日目:いざ、ダンジョン進入!

 神聖歴六一〇二年・皋竜こうりゅうの月第五日・天気:曇


 昨日の宿屋は素晴らしかったです。流石、値段だけあります。

 でも、マルガさんに泊めてもらった宿屋は、また別世界でした……いくら位するんでしょう? 気になります。


 さて、いよいよ憧れのダンジョン探索です!

 天気は少し元気がありませんけど、頑張りますよ!!


 待ち合わせ場所に行くと、既にエルさんが来ていました。

 マルガさんは――と思っていると、後ろから頭をコツンッとされます。誰ですか?


 振り返ると、彼女でした。でもいつもと少し装備が違います。

 今日は黒く艶光する露出の少ない鎧を着込んでいます。……蟻っぽいですね!!

 聞けばやはり迷宮蟻の素材を利用した鎧だそうです。これなら兵隊蟻の吐きだす酸も防げるんだとか。


 メンバーも揃ったので出発!! と思ったら、マルガさんから何かを縫い付けた布を手渡されます。

 ……何ですかコレ? 

 訝しんでいると、それで口と鼻を隠すように言われました。あぁ!! 臭い対策ですね!!

 外れないようにしっかり首の後ろで結びます。

 さぁ、これでようやく本当にダンジョンへ進入です!!


 ダンジョンの中は妙に湿っていて、生温かい空気が充満していました。

 そして、やはり臭いがキツイです……対策してもこれですか……。

 中は暗闇だと思い松明の準備もしていたのですが、何故か壁が仄かに光っていて無駄になりました。

 光の訳は、迷宮蟻達が主食である光茸ひかりだけを栽培しているからだと、エルさんが教えてくれます。……蟻って農業するんですね。


 そんな感じのダンジョンを三人で警戒しつつ進んでいきます。

 隊列は先頭がエルさん、中央が私、殿はマルガさんです。

 目指すはここより一五階層下にある兵隊蟻が出始める地点。……結構遠いですね。

 でも、このダンジョンは六〇階層辺りまで探索が終了していて、その地図があるため迷わず進めるで楽といえば楽です。

 未知のものだと、マッピングを一から始めないといけないので、大変苦労するそうです。


 マルガさんからそんな話を聞いていると、突然エルさんが立ち止ります。

 指で示す方へ目を向ければ、迷宮蟻が八匹程。色は灰色なので働き蟻ですね。

 さて、どうしましょうか? マルガさんへ目で問い掛けると、頷かれました。戦闘開始のようです!!


 ですが、戦いはあっという間に終わってしまいます。

 なんていうか、エルさんの動きがおかしいです!! え? なんで剣を一振りするだけで蟻の頭が四つ以上軽々飛ぶんですか!? 二振り目で全滅ですし!!

 ……私、剣の抜く暇もなかったんですけど……。振り返るとマルガさんが声を殺して笑っています。 

 ぐっ……つ、次は頑張りますもん!!


 そうやって度々戦闘を繰り返しながら私達は一五階層を目指すのでした。

 あれ? でも、もう結構な時間なんですけど、夜はどうするんですか?

 え? もしやダンジョン内で野宿ですか!? まさかですよねマルガさん!?

 !? どうして目を逸らすんですか!! エルさんまで!!!

 ……嘘だぁぁぁあ!!!


今日の収支

(ダンジョン探索中)

――――――――

残金:銅貨49枚


。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。 嘘ですよね!? 泊りませんよね! こんなところで!!

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