21日目:禁止勧告!!

 神聖歴六一〇二年・皋竜こうりゅうの月第四日・天気:晴れ


 今日も迷宮蟻の討伐です。

 薬草採取より断然こっちが儲かります。


 張り切ってダンジョンへ来たのですが、罠を仕掛けようとすると衛兵の方に止められました。

 はい? ギルドからの勧告? 罠が禁止?

 ……どういうことですか!?

 慌てて詰め寄りますが首を横に振るばかりで、詳しくはギルドで聞いてくれの一点張り……お、お役所仕事め!


 急いでギルドへ帰り、受付のお兄さんを問い質します。

 理由は重大なモノでした。なんでも私の真似をして罠を張り、迷宮蟻を狩ろうとするFランク冒険者が続出しているそうです。

 結果、大怪我を負ったり、再起不能になる人が少なからず出てきた為、禁止にせざるを得ないという事でした。

 ……こんな事なら昨日も無理して狩るべきでした……最悪です。


 やる気がなくなり、ギルドの酒場で途方に暮れていると、珍しく素面のマルガさんが心配そうに話しかけてきました。

 訳を聞かれたので、ポツポツと独り言のように理由を呟きます。はぁ……口を開くのも億劫です。

 説明し終えるとマルガさん、なんと爆笑です……この人は!!

 加えて私が悪いと諭してきます。

 裏技というのは、目立たないように裏でこっそり使うから裏技であり、私のように人目を憚らず使う物ではないと。

 ……うっ……そう言われると確かにそんな気がします……。


 ……でもやってしまったものは仕方がないのです。現在の死活問題は罠禁止令ではなく、いかに効率よくお金を稼ぐかなんです。

 そこのところ分かってますか、マルガさん?

 若干ふて腐れていると、しかし彼女は意外な提案をしてきます。え? 本気ですか? やはり貴女が女神か!!

 

 それは共同でのダンジョン探索でした。つまりパーティです!!

 ランクの問題はパーティ内にCランク以上の人が最低でも二名いればクリア出来るそうです。そんな抜け道が……。

 マルガさんが酒場へ呼び掛けると、それに応えてスレンダーな女性が歩いて来ました。

  

 名前はエルさん、なんとハーフエルフだそうです。

 凄い美人さんです。それに長くて綺麗な金色の髪ですねぇ、腰にまで届きそう。

 装備は白銀の全身鎧と長剣、カイトシールド。その全てに蔦が絡むような精緻な模様が彫られています。

 それを身に纏う彼女はまるで神話の戦乙女のようです。


 ……こんな人がどうして、マルガさんと知り合いなのでしょうね??


 私が自己紹介をしようとすると、またもやマルガさんが「これが例のナメークハンターさ」と余計な一言を!

 どこまで広げる気ですか!? そして、何やら納得していらっしゃる!?

 ……いつか払拭してみせますからね!?


 ダンジョン進入は明朝からという事になりました。

 ワクワクしますね! だって憧れのダンジョンですよ!!

 今日は寝れるか不安です……。

 !! 名案が浮かびました。今晩は前祝に高級な宿に泊まりましょう!

 美味しい料理に、広いお風呂、柔らかいベッド、安眠間違いなしです!

 お金は明日稼げばいいのです。


今日の収支

銅貨:-50(宿泊費)(寝床◎、食事◎)

――――――――

残金:銅貨49枚


ワクワク((o(゚▽゚○)(○゚▽゚)o))ドキドキ 明日はどんな冒険が……楽しみです。

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