14日目:護衛任務終了

 神聖歴六一〇二年・月兎の月第二七日・天気:雨


 最悪です……明け方から雨が降り始めました。

 ほぼ二日徹夜状態からのこの仕打ち……私達が何をしたというのですか。


 雨で容赦なく奪われる体温、削られるなけなしの体力、濡れて重くなる荷物、ぬかるむ足元……。

 足を止めたら、もう前には進めないでしょう。

 ……ガンツさんふらついてますけど……倒れないでくださいね、起こす余裕とか皆無ですから。

 あぁ、ミリさん寄りかからないでください、重い! 重いです!!

 マルガさん、なんでお一人だけ楽しそうなんです? そういう性癖なんですか?


 護衛の大半がこの調子では……今何かに襲われたら万事休すです。


 ……嫌な予感ってどうして当たるんでしょうね?

 前方の道を塞ぐようにして、野卑粗雑な姿をした男達が七人佇んでいます。手には抜身の剣や槍……。

 ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる彼らは、紛うことなき盗賊でしょう。

 マルガさんも武器を構えていますし……うぅ……本当に最悪です!!


 そこからはもう混戦でした。

 当り前です、対人戦なんて全くの未経験なのです!!

 それなのに出発時にマルガさんからは、盗賊が出た場合絶対に生け捕りにするように厳命されています。

 無茶振りも甚だしいのです!!

 今の状況でそんな余裕が何処にあるんですか!? それでも、頑張りますけどね!?

 

 けど、ほら!! ガンツさんなんてまともに剣を振れてないし!! 

 ちょっ!? ミリさん、ダメダメ!! そんなの頭めがけて振り下ろしたら、その人死んじゃう!!

 !? なんか、商業ギルドの人が剣を構えてるんですけどぉお!?

 って、この人もしつこいです!! しつこい男の人は嫌われるんですよ!?


 もう私自身何を言っているのか分からない程、無我夢中で剣を振っていました。

 ……どれくらい時間が経ったのでしょう? 気がつけば盗賊達は、マルガさんに手際よく縄で縛られています。

 ……いつの間にやったんでしょうね?

 私やミリさん、ガンツさんなんかは汚れるのも気にせず、道に仰向けで倒れている状態です……でも、全員大した怪我もなく無事のようですね、良かったです。疲れましたけど。


 その後小一時間ほど休憩し、縄で縛った盗賊達をぞろぞろと引き連れながらの再出発です。

 ふふふっ、疲れ果てているのに余計な荷物が増えたのです……。

 

 ようやく街に辿り着いた時には、日が沈みかけていました。

 街の衛兵に盗賊を、商業ギルドに荷物を引き渡して、やっと任務終了です!!

 ……もう報酬は明日受け取りに行きましょう。


 ……今から宿屋探しですか……面倒。

 そう思っていると、マルガさんから三人揃ってお誘いを受けました。着いた先は一目で分かる高級宿屋……ま、眩しいです。

 お金の心配をしていると、宿賃も夕食も全て奢ってくれるそうです!!

 驚いて理由を聞くと、お祝いという事ですけど、何でしょうね? 謎です。

 でも、もうどうでもいいのです。あぁ、お肉美味しい……とろけますぅ。

 

 こうして私の初の護衛任務は終了したのでした。


今日の収支

特になし

――――――――

残金:銀貨3枚、銅貨79枚


||寝室||Ю o(▽` o) =3 =3 =3  あぁ、ふかふかのベッドが私を呼んでいるのですぅぅ~……zzZ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る