8日目:素敵金属!!

 神聖歴六一〇二年・月兎の月第二一日・天気:雨


 今日は大雨です。昨日はあんなに晴れていたのに……。

 この雨の中、徒歩で帰りたくはないですね、憂鬱です。

 と思っていたら、街へ馬車で帰る方々に一緒に行くか尋ねられました。願ってもない事です。丁寧にお礼を言って、ご厚意に甘える事にしました。人と人の繋がりは大切ですね。


 街に着いたのは昼を少し過ぎた辺りでした。流石は馬車、早いです!!

 雨はこちらではすっかり上がっていました。

 早速、昨日採掘した銀鉱石をギルドへ換金しに行きます。

 ふふふっ、これで小金持ちなのです!!


 と、思っていたのですが……衝撃の事実が判明します。

 あれ、銀鉱石じゃなかったのです!!

 妖銀ようぎんといわれる銀によく似た鉱石で、素人目にはまず区別がつかないそうです。

 加えて、価値は銀の半分以下というおまけ付き。

 ……え? 沢山、沢山掘ってきたのですよ?

 ちょっと涙目でギルドのお姉さんを見つめていると、ある情報を教えてくれました。この妖銀、金銭的価値はそれ程ではないものの、武具等の加工では割と使える素材なんだそうです。


 それを聞いた私は慌てて例の武具店のお爺ちゃんを訪ねました。

 お爺ちゃんは最初、胡散臭そうに私を見ていましたが、妖銀を取り出すとその目を見開きました。

 何処で手に入れたか聞かれたので、正直に答えると、更に驚かれました。

 なんでも妖銀は、コボルドがいる鉱山の下層の方でしか採れないらしく、私のような駆け出し冒険者が表層近くで採掘できたのは奇跡に近いそうです。……今度からチーズは欠かさず持って行きましょう。

 

 で、この妖銀をどうやって使うかというと、他の金属と合わせて合金にするそうです。

 名称はバルト合金といい、鉄等より強靭で、腐食しにくい金属ということでした。……何ですか、その素敵金属!!

 私は早速、それで装備を整えようと思ったのですが、価格が高すぎました……え、素材持ち込みでもその値段ですか?

 更に詳しく話を聞けば、妖銀は冶金が困難で加工に苦労するらしいのです。その辺が、比較的採掘しやすい有用な金属なのに今一人気がない理由なのだそうです。

 

 現実の厳しさに肩を落としていると、しかしお爺ちゃんから意外な提案がありました。

 妖銀の半分を譲り受ける代わりに、追加料金なしで装備を整えてくれるというのです。

 驚いて訳を聞くと、駆け出し冒険者の幸運を祝して、という不思議な理由でした……いや、はい、ありがとうございます。

 ただ、全てをゼロから作るのはやはり無理らしく、仕方がないので現在使用している剣と革鎧を改修するという方向で話がまとまりました。

 作り直すだけなので、今から作業に入れば明日の昼頃には完成するそうです。

 私はお爺ちゃんにお礼を言い、装備と妖銀を預け武具店を後にしました。


 今夜はいつもの拠点候補に宿泊です。やっぱりしっかりした食事は美味しいですね。


 

今日の収支

銅貨:-14(宿泊料)

――――――――

残金:銀貨1枚、銅貨26枚


 ☆^(o≧▽゚)oニパッ お爺ちゃんの優しさに感謝なのです。新装備楽しみです!!

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