第3話 村人との交流が出来る?
「あの、助けてくれてありがとうございます」
どうしたものか、と考え込んでいた俺にアンナが話しかけてくる。ほかの大人たちや子供たちは様子を伺っているようだ。
このアンナという少女。年齢は15,6くらいだろうか?背はあまり高くはないが、女性らしい身体つきをしている。長い金髪は少し土ぼこりなどで汚れてしまっているが、きっと普段は輝くような金色だろう。
「いや、俺は俺に出来ることをやっただけだ」
「やっぱり……人の言葉が話せるんですね」
そういえば、さっきも伝わっていたな。条件がよく分からないが。……そういえばスキルに何かあったな。
「どうやらそうみたいだ」
「……それで、私達はどうなるんでしょうか」
魔物につかまった女子供は……行く末は本来ならばひとつしかないだろう。だが、今回は俺がいた。なぜかは分からないだろうが、突然自分達をさらったオークの親玉を俺が殺したんだ。
「……君達のいた村は……」
「ちょうど男たちが出稼ぎで村を離れているときでしたから少し壊された程度です」
恐る恐るといった様子でほかの女性たちと比べると年長者らしき女性が話しに加わってきた。
「そうか……すまないことをした。俺の……自我が芽生えたのは今日のことだ。もっと早くに気づけていれば防げたのかもしれない。すまない」
自我が芽生えたっていうのは厳密には違うだろうが、こう言っておくのが恐らくは一番当たり障りがないだろう。
「いえ……私達もここへつれてこられた時点で覚悟はしておりました。ですが、これからどうされるのか……分からないので」
「今から村まで送り届けるつもりだ。場所は……」
チラッと取り巻きのオークたちを見ると何人かが頷いていた。どうやら場所を覚えているようだ。
「で、ですが……本当によろしいんですか?」
「あぁ。代わりにといってはなんだが……俺達に動物の飼育の仕方を教えてくれないか?」
……あれから数ヶ月の月日が流れた。初めのころはお互いに恐る恐る関わっていたところもあったが、さすがに慣れてきたのだろうか。少しずつ子供と遊ぶオークたちが現れ始めた。
「ご主人、人の言葉というのは凄い物ですね」
そう、ほかのオークたちにも人の言葉を教えていったところ一部のオークは恐ろしく器用に人の言葉を使うことが出来た。ウェルはその中でも特に凄い。
「オークって思っていた以上に器用なんだなぁ」
「ははは、ご主人。われわれオークは元はエルフといわれているんですよ。だからウルクハイのご主人は人になることも出来るでしょう」
ウルクハイというのはオークの中でも特に強化されたウルク、そして更にそこに人の血が混ざったものらしい。
「タクト様!」
家の中に飛び込んできたのはアンナ。初めて会ったとき以来、不思議と俺に恐怖心を抱かなかったのか、家に遊びに来て家事をやってくれる。時々抱きつかれたりしてドキドキするのは内緒だ。
「アンナ。様はつけなくていいって言ってるだろ」
「いえ、タクト様のおかげで私達は今でも元気に生きているんです。それに時々村を狙う魔物や盗賊を追い払ってくれているのは知ってるんです!」
オークたちも人と慣れたのか、村の人限定かもしれないが人を襲う外敵を襲うようになっていた。……この世界では盗賊は死刑、もしくは奴隷落ちらしく人として扱わないらしい。……さすがに俺は人を食うことはしないが、ほかのオークたちも気を使っているのか、俺が見ていないときに済ませてくれる。
ちなみに、俺とアンナのこの掛け合いもいつものことでウェルが楽しそうに見ている。
「とはいえ、そろそろ男手が戻ってくる頃だよな?一旦全員引き上げさせたほうがいいか?」
「う~ん……さすがに目の前に突然タクト様たちがきたらお父さんも驚くだろうし……そうしたほうがいいかも?」
そういえば、村以外の人と会ったのは盗賊くらいのものだ。ちゃんとコンタクトが取れるか……心配ではあるな。
進撃のタクト 玄猫 @kuroneko-material
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