候補生の壊された夢

「俺の竹刀があぁぁぁぁああ!!」

かなり際どい服装の女の子たちとそれを指揮する太ったムカつく男二人、そして目の前の意地悪駄目神。かなりカオスで濃ゆいギャラリーで満たされた大地に木霊する俺の涙の咆哮。なぜ泣いているかというと、いろいろ端折はしょるが・・・俺の竹刀が消えました。

人々が目を丸くして俺に注目を浴びせるが俺は泣きながら駄目神、いやここはなんとしてでも返して貰うため褒めなければ。

俺は泣きながら駄目・・・ハイパーに透けた服を着たデラックスにブルンブルンさせることの出来るレジェンドなおっぱいを持つゴッド級の美貌を誇る女神様に縋りついた。

「お願いします竹刀を返して下さい俺の相棒なんだ息子なんだかなり太いだろいいだろじゃなくて大切な物なんだよぉぉぉぉぉ!」

わんわんと涙を流す俺に『?』を浮かべる女神からのお告げはこうだ。

「あの太い棒状のものは元の場所へと返しましたよ?」

「・・・へ?戻したの?」

ほ、本当に戻してくれたのか!?

「ええ、あの太い棒は戻しました。使わないなら返す、当然です」

勝手に出しておきながら当然もなにも無いのだが、まぁ良しとしよう。しかしさっきから『太い』とか少しえっちぃな。

ふー。危うく俺の相棒が消されてしまうかと思っちまったぜ。おまけに下腹部に寒気を感じたよ。

「・・・で、行っていい?」

呆然と突っ立っていた指揮官二人、及びその奴隷と思しき人物たち。だがそれも1人の人間が冷静さを取り戻したら周りの人間も我を取り戻すように、俺が冷静になればその周囲も徐々に冷静さを取り戻していった。

「・・・っ!あの小僧を早く殺さぬか!!」

「・・・お前達は命令に従ってさえいればいい。あの男を仕留めろ」

少しの間、躊躇いを見せた女の子たちだったが二人の男の言葉から逃れることは出来ないのだろう、女の子たちがこちらに瞳を向ける。そこに敵意はなく伏し目がちからの瞳からは「ごめんなさい」と懺悔しそうなほどに弱々しい光が宿っている。

それらの光景を目の当たりにしながらも俺は至って冷静だった。

「殴りたいんだけど・・・もう行っていいか?」

もう一度だけ横で悲しそうに憐憫れんびんの表情を浮かべる女神に問う。

女神は頷いてみせる。

「いいでしょう。・・・ですが」

「女の子たちにはケガさせないよ」

そう言った俺にびっくりしたという顔をする女神。当たり前だろ?殴りたいのはふざけた野郎二人だ。

「わかりました。では」

その時、火の球が飛んできた。「うわ!」と情けなく逃げ腰になるが、その火球は俺達の近くに来たところで弾けた。まるで何かに当たったように。まぁ、女神の結界とかなんかだろ。

「では?」俺は続きを促す。

「これを与えましょう。必ずあなたを守ってくれるはずです」

結界の中で輝きを放ちながら現れたのは大きめの輪っかだった。

「これをあなたに授けます」

ドドドドドドド!!

授ける、って言われても困るんですけど。筒のようになっていて腕が通るぐらいの太さがある。察するに、

「加護の腕輪か」

おお!過去に中二病発言してきた甲斐があったぞ!

俺の所属する剣道部には中二病部員がいるがその中でも防御専門のやつがいたりするからな。「これは守護の剣」などと言って「やーい、臆病者ー」「その剣で誰を守るの?」と散々言われていた部員がいた。あいつ気配りもできる優しいやつだったなと思い出した。

「・・・え?」

・・・え?なに、そのゴミを見るような目は?

「・・・これは『加護の腕輪』ではありません。『廻りの大盾』です」

・・・。

・・・。

・・・。

・・・は?廻りの大盾?大きい盾どころか盾でもない。腕輪でいいじゃん。

ドドドドドドドド!!

「・・・えっと、その設定理由は?」

「む。失礼ですね。・・・コホン、これは『大盾』とつくように防御力が高めで範囲が広く、形状変化のできる優れものです。いいでしょう?欲しくなったでしょう?」

ドドドドドドドド!!

これを聞いた俺はひどく落ち込んでいた。

その説明何?下手なセールスマンの文句じゃあるまいし。しかし、下手なセールスウーマン(女神)の説明は止まらない。

「そして!何より!いざ無くしても戻ってくるのです!それも直ぐに!」

下手くそすぎだ。これならたぶんだけど俺のほうがこれのPR上手いぞ。

ドドドドドドドド!!

これはヤバい。なにがヤバいって目の前のダメ女神に最初の出会った瞬間に神々しさとか感じてしまった自分がマジヤバい。性欲がわくのは男の子だから許して。

「故に!『廻りの大盾』です!!決してネーミングセンスの欠片もない『加護の腕輪』ではありません!!」

ドドドドドドドド!!

俺はセンスの破片も見つからない商品PRにうんざりだけどな。

ドドドドドドドド!!

ドドドドドドドド!!

「だー!うるせーなぁ!!なんとかならないのか!!」

俺は魔女や魔法少女の火の球や水の槍、土の人形の打撃などの魔法の攻撃とかなりヤバめ太めの女の子(?)の物理攻撃と それらを一切通さない結界とやらとのぶつかり合いの衝撃の音にうんざりしながら怒鳴る。

「あ、防音効果も付与します?」

「最初からしてくれよ・・・」

この女神は本当に駄目だなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る