第13話 結・1
神になれば……どうなるんだろう?
生き残る、ことになるのだろうか?
「ならんよ」
下上御前はあっさりと断言した。
「そもそも神というものは、人間が死んだあとに転生した存在なのだ。もしくは仙人が堕落したものでもある。仙人と人間の間に位置する
「じゃあ、僕はどうしたって死んじゃうってことに変わりはないってことか?」
「そうじゃ、実際とっくに死んでいる。それを生き返させるなんて
「でも! こうして生きてるいるじゃないか」
「それは私の夢だからじゃ。夢から覚めれば消えてなくなる。本当に徹底的に真実、反駁の余地もなく死んでしまうのう。科学的に見ても、道教的に見てもな」
「いや……! これは実は僕の夢で……目が覚めたら、平和で仲良しの家族が待つ家で……目覚めるんだ」
「そんな己を虚仮にするような妄想、無駄じゃ。人界には”胡蝶の夢”という言葉があろう。夢の中の蝶が己か、今の己が蝶の見ている夢なのか、とな」
猛烈に足の裏がかゆくなってきた。たまらなくなってお湯の中に腕を突っ込み、分厚い皮に爪を立てる。
たちまち野球のボール程度も大量の垢が掻き出され、ぎょっとしたがそれでも痒さがとまらず、手も止まらない。
「おやおや、お主も存在が不安定になってきているのう。これは私も目覚めが近いか」
「う、うう!」
なんだか泣けてきた。こんな少女に自分の存在が左右されていることがどうしようもなく情けなくて惨めで悲惨に思えた。
だからといって反抗する方法も思いつかない。相手はなんだか仙人とかいう存在でスゴイひとらしいし、社会的地位までもそれなりに高い人物らしい。
それに対して僕は、平凡以下の中学生だし、両親はどちらも精神がぶっこわれてしまい、父親は家から逃走し、母親は現実から逃走している。家も燃えて住む場所もない。聞いた話だと僕のような少年を保護する施設はなんの自由もなく、まるで奴隷並みの扱いをされる自由がなにもない場所らしい。
ははは、片方は”死”で、もう片方は”クソ過ぎる現実”。
なんて二択なんだ。
かーーーーん、と下駄の歯が床を蹴る音がした。
「さあ、そろそろ決断しないと全部が手遅れになる」
そうか……第三の選択肢が存在していた。
あまりにも怪しすぎて、ヤバいクスリを飲むという選択肢。
僕は一度ギュッと目をつむり、下上御前に答えた。
「お願いだ……!」
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