第5話 承・1
知っている? 橋というのは”この世”と”あの世”とつなぐものだってことを。
”
”こっち”から”向こう”へと渡るための場所。
その真ン中で、僕はうつらうつらとし、指先の間からタバコが落ちる。
街路に照らされた水面に映る僕が、それをひょいと取り、勝手に悠々と吸いさしをくゆらせ出した。
おいおい、中学生にとって、タバコは大層高価な嗜好品なんだぜ? ましてピンクの当たりの一本だ。これは絶対に見逃せない。
すでに半分寝ぼけている僕は、普通だったら絶対やらない行為をした。
鞄を脇に置き、コートを過ぎ捨てた。
僕がなにをするつもりか察したらしく水面の僕もおたつきだした。
「ひひ……」
ちょっと愉快な気分で春にはまだ早い季節の橋の欄干に登った。絶景といいたいが生憎、夜なのでしけた夜景以外ろくに見えもしない。
遠くを改造バイクが下痢便を思い切りひり出してアンプを通したような走行音が響いていくだけだ。
まあ
改めて水面をのぞくと、水中の僕は流れに姿を崩されそうになりながら、来るなと必死に手を振っている。
調子こいているヤツのところに文句をいいにいく。
他にあり得ないだろ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます