第4話 起・4

「中学三年生か……」



ついもらした言葉の重みに胃が痛くなった。いつもそうだ。精神的プレッシャーで腹が下るのだ。近所にコンビニあったっけ?



吸い終えたタバコを水面に投げ、新たなタバコ(もちろんマルボロゴールドだ)を口にくわえる。



タバコは精神病院に通ううちに覚えた。あの手の精神科はやたらと患者も医師も喫煙率が高い。そこの患者のひとに軽いノリで勧められ味を覚えてしまった。



タバコを吸うようになり、精神科であんなにもこの悪癖が普及している理由が実感できた。孤独感が薄れるのだ、吸っている間だけは。たった一本に火がついて消えてなくなるまでの間だけの文字通りの”相棒”となる。



健康なんざクソ喰らえ。そんなことに構ってる余裕なんざ、こっちはないのだ。



ヘルシー志向など金持ちのホメオパシー同然の道楽に過ぎない。



「おや?」



いつもは純白のマルボロゴールドが一本だけピンク色だった。



いわゆる当たりという奴……だろうか?



とにかく気分を落ち着かせるため、今まで未経験の連続三本吸いを決行した。



「ほう……美味いじゃん。まるで気分は桃源郷、とくらぁ……」



我ながら中学三年生らしからぬ感想をつぶやきつつ、ずるずると橋の欄干に倒れ込む。ふわふわと酒を飲んだからこんな感覚になるのだろうか。生憎アルコールはまだ未経験である。



「ね、むい……ね…………」



こうして僕は眠ってしまったのだった。



それが「神の国の入り口」とも知らずに。


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