第3話 起・3

といっても話は実に簡単で、母親が精神的疾患を患っており、それの看護のため父親の精神が限界まで達してしまい、僕の目の前で家庭内暴力やら暴言やら罵倒やらが飛び交い、ついにはプッツンした父親が家に火を放ち、その後逃走。母親はもともとの精神疾患をさらに悪化させ上着一丁の格好でうろついているのを警察官によって保護された、というのがこれまで僕の身に起こったことだった。



父親はまだ見つからない。



知っている? 都市伝説で登場する黄色とか緑の救急車は実在しないんだよ? この目で確かめたから間違いない。



こうやって書いていると平然としているみたいだけど、正直かなり動揺している。それもかなりね。それに母親の精神疾患が遺伝するという知識があるならなおさらだった。



これからどう過ごせば良いのか。そしてこんな状態であっても両親を恨むということはできないという現実には我ながら驚いた。



たぶん、身近で互いに苦しんでいる姿を見ていたからだろう、と推測する。母親が家の壁に自分の糞尿を塗りつけたのを、黙って拭い去っていた父の辛そうな情けなさそうな表情を思い出す。母親は今の家を購入した時、また小学生にもならない僕に世界一居心地のいい家を作ると宣言していたものだった。



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