第17話 ※宇雅の地
「あれほど会うなと言ったはずだが」
突如背後から聞こえてきた声に、宇雅はゆっくりと振り返る。
「父上? 何故ここに……」
怒りに狂うでもなく、ただ静かにこちらを見つめている須佐ノ男は、何かを決心したような顔をしている。
「父上、私はあの娘を諦めるつもりはありません。あなたが何と言おうと、この気持ちに蓋をすることなど出来ぬのです」
宇雅の瞳に宿る確かなその熱を、須佐ノ男は感じ取った。
「どうしてもか」
「はい」
「あの娘でなければならんのか」
「芽衣以外見れませぬ」
「そうか……」
気のせいか、先程よりも穏やかな表情になった父はこう続けた。
「では、お前は今から宇雅の地へ行け」
「宇雅の地?」
宇雅の地、とは出雲の大社の裏に連なる山々のことだ。そこへ行け、とこの父は言う。
「そんな所へ行ってどうするのです?」
「行けばわかる。あの娘を大事にしたいと言うのなら、まずは宇雅の地へ行け」
そこまで言うと、須佐ノ男はその場から姿を消したのだった。
◆
父の姿が消えてからも尚、宇雅はその場に立ち尽くしていた。
彼の口から、『宇雅の地』という言葉を聞いた途端、何か熱いものが体中を駆け巡ったのだ。それが一体何なのか、答えは今から向かう場所にあるのかもしれない、と半ば急き立てられるように、宇雅はその地へと向かった。
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