幕間 非凡な平民

子どもにだけ見えるものがあるとか、小さい頃は第六感が優れていて大人になるにつれて失われていくとか、よくそういう話を聞く。

俺もガキの頃はよく妄想したり、本気で魔法を使えると思ったものだ。

なにもないところを凝視したりすれば、大人は「この子には私達には見えないものが見えているんだ」とか騒いでいた。

なんてことはない。

本当になにもないところをじーっと見ていただけだ。

ただそういうことをすれば、大人がかまってくれるから、俺もその気になっただけ。

そして、いつしか俺も大人になり、現実を理解した。

超能力や、魔法なんてのはなく、この世界は法則(ルール)によって決められたことしか起きない。

不可思議なことはあっても、それはまだ知らない法則によって縛られているもので、本当の意味で「魔法」なんてものはない。

なにも、ないところから火や水が出ているように見えて、そいつの手には羊皮紙が握られている。

起こせる現象だって限られている。

だから俺の「これ」も魔法じゃない。

大人になってわかった。これもほかの魔術と一緒だ。

ただ違うのは、この「数字」は、俺以外に書いたり読んだりできるやつがいないということだ。

回りの連中は、俺のことを神かなにかと勘違いしているらしいが、なんのことはない。

俺だって、刃物で切られれば赤い血がでるし、腹は減るし、糞もする。

そこのところが理解できていない連中ばっかりだ。

便利だから利用してきだが、そろそろ潮時だな。

俺は俺のやりたいことをやる。

あいつらの信仰のための神(いけにえ)になどなってたまるか。

その日俺は初めて自分のためだけに力を使い、初めて人を殺した

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